【6月21日付社説】機能性表示食品/品質管理の徹底で安全守れ

 健康の維持や増進に寄与する効能を表示しながら、消費者の安全をおろそかにしていては本末転倒だ。国や事業者は、抜本的な対策を講じる必要がある。

 小林製薬の紅麹(べにこうじ)サプリメントを巡る問題を受け、国は、機能性表示食品に関する対応方針をまとめた。柱の一つは、現行法令で努力義務となっている健康被害に関する情報提供を事業者に義務付けることだ。被害の疑いがあるとする医師の診断を把握した事業者は、因果関係が不明でも国などに報告しなければならないとした。

 小林製薬が情報の公表までに約2カ月を要したことで、被害の拡大につながった可能性が指摘されている。公表遅れの要因の一端は情報提供を努力義務としていた国の甘さにあり、義務化は遅きに失したと言わざるを得ない。

 被害情報は国が集約し、分析などをした上で定期的に公表するとしている。しかし、分析などに時間を要して被害の拡大につながるリスクは、国も事業者も変わらない。情報を得た段階で速やかに公表することが重要だ。

 機能性表示食品の種類は錠剤やカプセル形状のサプリから、野菜や果物など生鮮品まで幅広い。中でも、小林製薬の問題を受けて対策の必要性が高まっているのがサプリの製造工程管理だ。

 国の調査によると、紅麹サプリの製造過程で混入した青カビの影響で作られた物質が、腎障害を引き起こした可能性が高い。サプリは原料の成分が濃縮されるため、毒性物質が混入していた場合、健康に及ぼす危険性が高くなる。

 国はこうした特性を踏まえ、サプリの製造工程や品質管理に厳格な基準を適用することを事業者に義務付ける。基準の順守状況の自己評価と公表を事業者が怠った場合、国は機能性表示を明記しないよう指示・命令する。

 品質管理などの厳格化は評価できる。国や事業者には、サプリ製造に伴うリスクの知見を継続して集積し、対策のさらなる強化に生かしていくことが求められる。

 機能性表示食品制度は、国の規制緩和策の一環で2015年に始まった。事業者の責任で効能や安全性の科学的根拠を示して国に届け出れば、効能をうたった商品を販売できる。国の許可が必要ない手軽さから商品開発が進み、市場規模は大きく拡大した。

 事業者任せの届け出制がずさんな品質管理を招いた面はないか、検証が欠かせない。健康被害が繰り返されることのないよう、国は許可制への転換を含め、規制の議論を進めていくべきだ。

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