雨の日の傘トラブルに注意 電車の中でどう持つのが正解? 水滴の正しい落とし方などを聞いた

雨の日に傘を差した人が多く行き交う横断歩道(写真はイメージ)【写真:写真AC】

近年、話題になることが多い、雨の日の傘マナー。とくに人が混み合う場所では、傘の開閉や持ち方でトラブルになることも。そこでマナー講師の江頭美鈴さんに、人が混み合う場所で心得ておきたい「傘マナー」ついて伺いました。

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人が混み合う出入り口付近での傘の開閉マナー

雨の日は、傘を開いたり閉じたりするため、駅や建物などの出入り口付近がいつも以上に混雑します。傘の先端部分(露先)が顔に当たりそうになるなど、怖い思いをした経験がある人もいるでしょう。

江頭さんは「傘を開くときは、人がいない場所を見つけるようにしましょう」といいます。そのうえで、とくにワンタッチで開くタイプの傘に関して注意を呼びかけます。

「ワンタッチで開くタイプの傘はとても便利な反面、いきなり傘が開くため、不意を打たれた周囲の人に当たる可能性があります。傘を開く際は、両手を使い、押さえるようにしてゆっくりと開きましょう。周囲の人の顔に当たらないように、まずは傘を下向きにして少し開いてから、露先を上にして完全に開くようにしましょう」

同様に、人混みで傘を閉じるときも注意が必要です。

「こちらも人が少ない場所を探して移動し、傘を差した状態のまま片手でストッパーをはずし、傘を少しすぼませたら、傘についた雨水を静かに落としていくようなイメージで斜め下にゆっくりと降ろします。露先が下に向いてから、完全に閉じましょう」

こうすることで周囲の人に傘が当たったり、水滴が飛び散ったりすることなく、閉じることができるそうです。

傘についた水滴はどう落とすのが正しい?

傘を閉じる際、傘についた雨水をバサバサと振り払って落としがちですが、もちろんこちらもマナー違反。

「傘の先端部を下に向けて軽く振るか、地面を数回、トントンと叩いて水滴を落とすようにしましょう。また、露先に水滴を集めるように傘を閉じ、周りに誰もいないことを確認してから軽く振って落としましょう」

ただし、何度も傘を振って水滴を落としたり、地面に先端部をつけてクルクル激しく回したりして水滴を落とす行為も、周囲の人の迷惑になるため注意が必要です。

とはいえ、傘を濡れたまま室内に持ち込むと、水滴が垂れて床や階段が滑りやすくなったり、自分だけでなく、ほかの人に触れたときに持ち物や服に水滴がついてしまったりするおそれがあります。そのため、「濡れたままの傘を室内に持ち込まないようにしましょう」と江頭さんはいいます。

混み合う車内で濡れた傘はどう持つ?

電車やバスなど、雨の日は人が混み合うため、傘の持ち方によっては周囲の人の靴や服、持ち物をうっかり濡らしてしまうことがあります。それが原因でトラブルになるケースもあるので、濡れた傘の持ち方には注意したいところです。

「公共交通機関内では、濡れた傘がバサバサしないように必ずベルト(ネームバンド)を留めて乗車し、傘を自分の体に近づけて、体の正面で持つようにするといいですね。また、バスの場合は、直前まで傘を使用している可能性があるので、ほかの乗客を待たせないよう乗車する前にスムーズにたたんで、人にかからないように軽く水滴を落としておきましょう」

また、車内では床に傘の先端部をつけて軽く固定すると、揺れたときも安全。ボタボタ垂れてくる水滴で、周囲の人の靴を濡らすこともないと江頭さんはアドバイスします。

最も気をつけたいのは「傘の横持ち」「傘振り歩き」

近年、SNSなどには傘の持ち方に関するトラブルの報告が相次いでいます。駅の階段やエスカレーターなど段差がある場所で、前の人が持っている傘の先端部分が自分の顔の前に来て「怖い思いをした」という人もいるでしょう。

これは地面と平行にして傘を持つ、いわゆる「横持ち」。段差がない場所でも、後ろに子どもがいる場合などは傘の先端が顔の位置に来ることもあるため、とても危険な持ち方です。

「無意識に傘の本体を掴んで横にして持っている人もいるかもしれませんが、傘の『横持ち』は想像以上に危険です。傘のハンドル部分で前方にある何かを引っかけたり、とくに階段やエスカレーターでは、先端部が後ろの人の顔の位置に来たりすることもあるので、すぐにやめましょう。ハンドル部分をしっかりと握り、肘を曲げ、地面に対して垂直にする『縦持ち』をおすすめします」

雨がやんで、傘を手に持って歩く際も注意が必要です。腕と一緒に傘を大きく振る「傘振り歩き」は危険なため、傘を体に固定して持って歩きましょう。また、リュックに挿したりかけたり、バッグのように腕にかけて持つのも、転んだ際に思わぬ事故につながることもあるので避けたほうが無難だと江頭さんはいいます。

便利な折りたたみ傘で気をつけておきたいマナー

雨が降りそうな日は、折りたたみ傘をカバンに入れておく人も多いでしょう。軽量でコンパクトなものが好まれますが、江頭さんによると、小型化されればされるほど、差すときに意識しなければいけない点があるそうです。

「折りたたみ傘の場合は、長傘よりも低めの位置を持つことを意識するといいでしょう。小雨のときはそこまで気になりませんが、雨が強くなると、より低い位置で傘を持つことで、カバーできる範囲が広がるため濡れにくくなります」

また、折りたたみ傘は、訪問先や立ち寄ったお店の傘立てにしまえないことがほとんどのため、濡れた状態でしまえる防水の傘カバーの携帯がおすすめだそう。これから迎える梅雨。嫌な気持ちを少しでも減らして、気持ち良く過ごしたいですね。

江頭 美鈴(えがしら・みすず)
M.E.プロダクション代表。一般社団法人エグゼクティブ・イメージコンサルタント代表理事、NPO法人日本サービスマナー協会認定マナー講師。東映の女優を経て、アナウンサー・司会などの話す仕事へ転向し、ブライダル業界には約30年携わっている。またイメージコンサルタント、交流分析士などの資格も生かし、「話し方」「ファッション」「マナー」「心理カウンセリング」の4つの専門スキルを統合した独自カリキュラム、メソッドを開発。現在は、婚活講師、マナー講師、話し方講師をはじめ、企業・団体の人材育成に努めている。

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