山下美月、乃木坂46卒業後も俳優として躍進 『降り積もれ孤独な死よ』記者役は新境地に?

7月7日より読売テレビ・日本テレビ系にて放送がスタートする成田凌主演ドラマ『降り積もれ孤独な死よ』に山下美月が出演することが発表された。2024年5月に乃木坂46を卒業した山下にとって、本作がアイドル卒業後初めての出演となる。すでに映画『六人の嘘つきな大学生』への出演は決まっているものの、乃木坂46卒業後はしばらく表舞台に立つ姿は見られないと思っていたので、このニュースには驚きとともに俳優として輝く山下を見られる嬉しさが訪れた。

本作は、『マガジンポケット』(講談社)で連載中の同名漫画が原作。一軒のひとけのない屋敷から13人の子供の白骨死体が見つかった通称・灰川邸事件と、1人の少女の失踪事件という過去と現在が交差するスリリングなヒューマンサスペンス。山下が演じるのは、灰川邸事件から7年後の2024年に起きた1人の少女が失踪した事件を追う『週刊文苑』の記者・森燈子。取材をしていく中で少女失踪事件と灰川邸事件の繋がりに気づいた燈子は過去の事件の真相を暴くべく奮闘する。

燈子はドラマオリジナルのキャラクターであり、原作には登場しない。どのように燈子が物語に関わってくるのかが最大の注目ポイントだが、ストーリーに記者としての視点が加わることで、サスペンスとしての重層的な面白さが生まれるはず。山下のイメージからは記者役というのは想像ができないが、今の俳優としての山下には安心感がある。

それはこれまで培ってきた経験値の大きさだろう。2022年以降に絞れば、年またぎとなった朝ドラ『舞いあがれ!』(NHK総合)でのヒロイン・岩倉舞の幼なじみ・望月久留美で朝ドラデビューを果たすと、『スタンドUPスタート』(フジテレビ系)、『弁護士ソドム』(テレビ東京系)、『さらば、佳き日』(テレビ東京系)、『下剋上球児』(TBS系)といった作品に立て続けに出演。

かつてのイメージとしては、『着飾る恋には理由があって』(TBS系)や『じゃない方の彼女』(テレビ東京系)で見せた“あざとい”キャラが山下のパーソナリティとも相まって注目されることがあったが、ここ数年の山下は『弁護士ソドム』の変装が得意な元結婚詐欺師というトリッキーな役から、『さらば、佳き日』におけるしっかり者の保育士役まで、多彩な個性の役を引き受けており、何でも柔軟にこなせる実力派俳優という印象も強くなってきた。

卒業前最後のドラマとなった『Eye Love You』(TBS系)では、恋愛強者という役柄を表情豊かかつ抑揚たっぷりに演じていたのが印象的で、コメディエンヌ的な才覚も感じさせた。もはや演じられない役はないのではと思わせるくらい幅広い役を演じてきた山下だからこそ、今回の期待値も大きい。

とはいえ、記者役は山下にとって大きな挑戦となることは間違いないだろう。これまではいわゆるアイドルとしてのキャラクターが踏襲された、分かりやすい“かわいさ”みたいなものが役にリンクすることが多かったように思うが、今回の記者役は情報を見る限りでは、おそらくそういったイメージは求められていない。今回はシリアスなシーンも多くなるはずで、山下の精悍な表情が見られそうだ。

山下は本作への出演にあたって「事件の裏に隠れた家族の愛や罪も、全てを明らかにするのが記者としての正義ではありますが、それと同時に一人の人間として守りたいものも大切に演じたい」といった思いも明かしていた。普段はメディアにさらされる立場である山下が、本作ではさらす側として立つ。それでも「人間としての守るべきものを大切に」という山下の言葉は響いてくる。

山下は本作で好奇心が強い記者をどのように演じてくれるのか。間違いなく新境地の演技が見られるはずで、早くも7月が待ち遠しい。
(文=川崎龍也)

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