ゲーム大手Embracer Group、開発にAI活用を発表。老舗スタジオ閉鎖やリストラの後で

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多くのゲーム会社やパブリッシャーを傘下に擁するEmbracer Groupが、大量のリストラを行い数十のゲーム開発を中止したことに続き、ゲーム開発にAIを全面的に投入する方針を打ち出した。

Embracer Groupは、THQ NordicやGearbox Entertainment、Crystal Dynamicsなどの親会社。昨年秋に『セインツロウ』シリーズ開発元のVolition Gamesを閉鎖し、『トゥームレイダー』シリーズ等で知られるEidos Montrealほかでも人員を解雇。さらにはゲーム業界内外でAIの利用をめぐる論争が繰り広げられている最中のことだ。

同社は年次報告書にて、AIを使わなければEAやソニー、スクウェア・エニックス、ユービーアイソフトといった他の大手ゲーム大手に遅れを取ることに繋がると説明。それにより開発プロセスを迅速化し、最適化されたゲームプレイ体験を提供するのに役立つと主張している。

具体的には、「AIはリソース効率を高め、インテリジェントな行動やパーソナライズ、ゲームプレイ体験の最適化により、開発を大幅に強化する能力がある」「AIの活用により、より魅力的で没入感ある体験を生み出し、プレイヤーごとにユニークでダイナミック、かつパーソナライズされた体験を提供できる」とのことだ。

その一方で、AIの導入にリスクがないわけではないことにも言及。適切に訓練したり指示しなかったり、設計外の目的で使った場合は「非倫理的、偏見、差別的、または完全に間違った結果を生み出す」可能性があると述べている。

さらにAIが人間を置き換えることを望んでおらず、技術に対して「人間中心」のアプローチを取るとも主張。キーボード等を操作できない障がい者を含めて、一部の人々にゲーム業界に参入する道を開くとまで言っている。

これがVolitionのような歴史あるスタジオを30周年の2か月後に閉鎖したり、過去1年間に1500人の従業員を解雇したり、約80ものゲームを開発中止にしていなければ説得力があっただろう。ハリウッドでも脚本や演技にAIを導入することをめぐり何か月も交渉がもつれにもつれ、AIが書いた脚本に基づく長編映画が上映中止に追い込まれた後だけに、今回の発表に対する反応を見守りたいところだ。

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