デンソー、「農場の工場化」を実現する全自動収穫ロボ「Artemy」を欧州市場へ投入

デンソーは6月19日、農業事業の取り組みと、房取りミニトマトの全自動収穫ロボット「Artemy」(アーテミー)に関する説明会を開催した。Artemyは、5月14日から欧州地域で受注を開始している。

デンソーは、気候変動や就農人口の減少、物流の多様化、フードロスなどの社会課題の解決に向け、自動車事業で培った技術を食農分野でも展開している。同社でフードバリューチェーン事業推進部担当 上席執行幹部を務める向井康氏は、中でも施設園芸の分野で自社の技術をもっとも生かせるとして、「農場の工場化」をコンセプトに、今後も機器やシステムを提供していく予定だと述べた。

さらに向井氏は、欧州の社会課題と市場概況、Artemy開発までの経緯を説明。欧州はトマトの最大市場であることを示し、気候変動や労働人口の減少など、日本と同様の課題を抱えているとした。

中でも、房取りミニトマトの収穫は全作業時間に占める割合が高く、デンソーではまず、房取りミニトマトの全自動収穫ロボットを市場投入することが決定したという。

Artemyの開発は、2016年から開始し、2020年からオランダの施設園芸事業者であるセルトンとの共同開発に移行。自動収穫機能に加え、自動レーンチェンジ、収穫箱の自動交換と自動移載、ハサミの自動消毒、LED補光下での収穫などの機能が搭載された。

「欧州ではLED補光の機能を持つハウスが多く、LED補光下でも正しくトマトを認識して熟度を判定し、収穫することが求められた。ウイルスの流行のためハサミの消毒も必須であり、このようなマーケットの声をセルトンが拾い、開発に反映していった」(向井氏)

続いて、フードバリューチェーン事業推進部担当 部長を務める大原忠裕氏が、Artemyの欧州での反響について説明。「施設園芸事業者向けの展示会『GreenTech』では、セルトンのブースに従来よりも多くの来場者が訪れた。注目を集めたのはやはりArtemyで、他社は単独で農業ロボットの開発を行う中、セルトンとデンソーの専門性を掛け合わせた共同開発製品であることが評価された」と話し、「人とロボットの協働」というArtemyのコンセプトにも共感が集まったとした。

デモンストレーションでは、三重県いなべ市のアグリッドにある農業ハウス内で、Artemyがミニトマトを収穫するところを実演。自動運転に使われている画像認識AIがトマトの熟れ具合を判別している様子や、自動でレーンを移動する様子が公開された。

プレスリリース

© 朝日インタラクティブ株式会社