休業中の宿泊温泉施設「ゆかり館」差し押さえ 年金機構、社保料滞納原因か 社長とも連絡取れず 島根県出雲市

休業を知らせる貼り紙=出雲市佐田町原田、出雲須佐温泉ゆかり館

 出雲市佐田町原田の宿泊温泉施設「出雲須佐温泉ゆかり館」の建物と土地が、日本年金機構に差し押さえられていることが分かった。経営する30代の男性社長と3月末以降、連絡が取れておらず、社会保険料滞納の可能性がある。施設は昨年12月に改修工事のために休業中。再開の見通しは立っていない。

 ゆかり館は1995年、旧佐田町が須佐神社近くに整備。合併後の出雲市が2015年3月に示した公共施設の在り方指針で民間譲渡が適当とし、譲渡された地元企業スサノオドリームが18年4月に経営を引き継いだ。

 登記によると、今年5月14日に土地(4027平方メートル)と建物(延べ床面積3093平方メートル)を日本年金機構が差し押さえた。同機構出雲年金事務所は差し押さえ理由を明らかにしていない。社保料滞納の場合、再開には未納分の支払いなどが必要になる。

 元従業員男性や同社関係者によると、社長は今年3月末ごろから連絡が取れなくなっており、改修工事も同時期に中断したという。3月末時点で従業員は約20人いるが、3月末以降、給料が支払われていない。4月に退職した元従業員男性は「自分の生活のこともあるし、腹立たしい」と話す。

 株主などによると、前回の株主総会は昨年6月下旬に実施されたが、今年はまだ案内もなく、株主の男性は「状況を説明するべきだ」と憤る。

 同社は23年5月、老朽化したボイラーや配管設備の改修工事のため、温泉施設の利用を休止。同12月には工事のため宿泊や館内の飲食施設も休業した。

 市観光課によると、同社は施設のリニューアルに観光庁の補助事業を利用。23年度分は工事の実績に基づき補助金が交付された。額は明らかにしていない。24年度分は同社が国に直接辞退を申し出たという。

 観光庁の担当者は、施設の高付加価値化が認められなかったり、廃業したりした場合は補助金の返還を求める場合があるという。

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