「金曜の深夜なのに…」タクシーの姿なく歓楽街が悲鳴 客足遠のく“夜の街”復活へ「ライドシェア」導入を検討

タクシー不足が夜の歓楽街に打撃を与えている。タクシーが姿を消し「運転代行」ばかり。温泉の街、佐賀・武雄市では、客足が遠のく夜の街に活気を取り戻そうと「ライドシェア」導入の検討を始めた。

タクシーが姿を消した歓楽街

西九州新幹線の高架沿いに多数の飲食店が軒を連ねるJR武雄温泉駅近くの歓楽街。時刻は金曜日の午後10時を過ぎた頃。

夜の街にもかかわらず、この日、通りにはタクシーは一台も見当たらない。目立つのは運転代行業者ばかり。

地元の人は、「以前は歩いて来てタクシーで帰っていたが、最近はタクシーがつかまらないので運転代行で帰る」という。この夜、話を聞いた人のすべてが運転代行を利用していた。

武雄市では市内を運行するタクシー会社2社が深夜の営業をほぼ取りやめている。歓楽街の飲食店への影響も大きいようだ。「タクシーの営業時間が決められているので、その時間までに帰る客が多い」とバーの店員はいう。

常連も来なくなった…遠のく客足

この歓楽街で45年間営業を続けているスナックで話をきいた。

スナックの経営者は、「今まで来てくれていたお客さんはほとんど足がなくて出てこられない。タクシーは1時間待ちと言われたり、夜中の12時に奥さんに迎えに来てくれるよう電話したりしている人が結構いる」と客足が遠のいている現状を語った。

夜の街を直撃するタクシー不足。背景にあるのはドライバー不足だ。

コロナ禍でタクシードライバー激減

70年以上、武雄市の交通を24時間支えてきた「温泉タクシー」の山口輝二郎社長は、「コロナ禍を経てドライバーの数が大幅に減少した」という。

コロナ禍で深夜の営業や予約の受け付けをやめ、かつてピーク時は100人を超えていたドライバーは2024年には38人まで減少。社長も自らハンドルを握るほどドライバー不足が深刻だ。山口輝二郎社長は「予約をいただきたいのは山々だが、それが守れないともっと大きな問題になるので申し訳ない」と苦渋の表情をみせた。

ライドシェアの導入を検討

こうした中、武雄市が導入を目指しているのが“自治体版”ライドシェア。タクシー会社がドライバーを管理することを条件に、タクシーの免許がない人も自家用車などで客を乗せ、報酬を得ることができる制度だ。

武雄市 まちづくり部 都市政策課 田中良輔主任:
旅館組合や飲食業組合などからもライドシェアについては要望があったので、タクシー会社と共存共栄っていう中で、タクシーの運賃と同等というかたちで考えている

市は議会にライドシェア実証運行の事業費などを盛り込んだ予算案を提出。県内の自治体で初の導入を目指している。

市の担当者は、「利便性が向上し、夜の観光にもいい影響が出てくるのではないか」とライドシェアの効果に期待を込める。また地元の飲食店からも「遅い時間まで楽しんでもらえる。活気が戻ってきてほしい」と歓迎する声がきかれた。

抜本的な解決策か?疑問の声も

一方、地元のタクシー会社は「運行できない時間などサービスを補完するのは仕方ない」と話すものの、抜本的な解決策になるのか疑問を口にする。

温泉タクシー・山口輝二郎社長:
タクシードライバーが増えるような方策。その部分でやっていただければ(解決は)早いのではないかという気はしますね

ライドシェアの実証実験へ

武雄市は、約3カ月間交通機関の利用状況を調べ、その結果を踏まえてライドシェアの実証実験を2024年12月から約2カ月間行う予定だ。

タクシー不足が深刻化する中、ライドシェアの導入が夜の街が活気を取り戻し、地元の発展につながるのか注目されている。

(サガテレビ)

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