廃校を民間企業にオフィスとして貸し出す取り組み 鹿児島県・錦江町

毎週金曜日は大隅フラッシュ。
鹿児島県鹿屋市の鹿屋スタジオから生中継です。

2年前の大隅フラッシュで、閉校した中学校を民間企業にオフィスとして貸し出す、鹿児島県錦江町の取り組みを紹介しました。
そこでは今、全国のクリエイターたちを見据えた、新たな動きが始まっています。

2008年に閉校した、錦江町の旧神川中学校です。
錦江町では生徒たちがいなくなったこの場所を、民間企業にオフィスとして貸し出す取り組みを、2017年から続けています。

吉留李奈リポーター
「神川中学校は現在、5つの企業が入っています。ここ3年生の教室は岡山県の企業の職場となっています」

かつての教室がその面影を残しながらオフィスに。
窓から見下ろした先に広がる、芝生で覆われた校庭はスタッフお気に入りの光景だそうです。

A0グループ・大井健史さん
「窓の外からすごくきれいな芝生が見える。働く時は働く。でもちょっと安らぐ時間もある。そういうことが共存できているのは、とても素敵な場所と思う」

芝生の脇には、机といすが置かれたスペースも。
新しく完成した屋外オフィスです。

さらに新たなオフィスは屋上にも設けられています。
これらの新たなオフィスやコワーキングスペースは、1人1日600円で使用できます。

広大な海と、雄大な山。
自然に囲まれた空間での仕事とはどんなものなのか、私もちょっと体験してみました。

吉留李奈リポーター
「外ということで、この風を感じながらというのもすごくいいなと思った。エアコンの風とは違うそよ風、自然の風を感じながら仕事ができるのは素敵だなと思いました」

変化は設備だけではありません。
いま、旧神川中学校では、レンタルオフィス以外での活用の可能性が見え始めているんです。
その鍵を握る打ち合わせがオンラインで行われていました。

打ち合わせの相手は、あらゆるジャンルのクリエイターたちが自慢の手作りの品を出品する、ハンドメイドマーケットプレイス大手、クリーマの渡部さんです。

クリーマ・渡部優紀さん
「弊社と錦江町のコラボイベントの際に、子供たちのブースを出して展示販売する、そういう流れを組めたら、というのが全体のイメージです」

錦江町未来づくり課・中島裕二課長
「完璧です!」

全国27万人のクリエーターと、その作品を愛する人々を繋ぐプラットホームを運営するクリーマは、
「クリエーターたちのための作業・保管スペース」として、旧神川中学校のポテンシャルを高く評価。

空きスペースがほしいクリエーターと、空きスペースを利活用したい錦江町のマッチングにも力を入れています。

クリーマ・渡部優紀さん
「(クリエーターは)作品を作っていると、自分の居場所よりも作品を保管する場所の方が広くなって、足の踏み場もなくなる。空きスペースの利活用ということで、学校をここまで利活用しているのは錦江町が最先端」

クリーマは2023年12月、旧神川中学校でクリエーターたちが2泊3日の活動を体験するイベントも開催。
そこでは予想外の反響もあったそうです。

クリーマ・渡部優紀さん
「いろんなジャンルのクリエーターが集まることで(クリエーターの)視野が広がっていく。そういう環境があることはクリエーターの物づくりにいいことだなと感じている」

吉留李奈リポーター
「錦江町に来たクリエーターの中でもマッチングが行われる形ですね」

クリーマ・渡部優紀さん
「そうですね。非常に理想的ですし現実的でもある。実現性は高い」

旧神川中学校とクリエーターのマッチングは、事業開始当初は想像できない展開だったといいます。

未来まちづくり課・中島裕二課長
「不特定多数にターゲットを広げて、移住や体験を求めてもなかなか来てもらえなくて、逆にクリエーター、アーティストとターゲットを狭めたことで、たくさんの注目をいただいたことにヒントを得た。小さな縁をいただきながらその縁をちょっとずつ、つなぎ留めながら新しいところに挑戦している状況」

錦江町によりますと、これまで旧神川中学校を起点に生まれた移住・雇用人口は約30人。

各地で人口減少が進む中、関係人口の増加を目指す多くの自治体にとって、錦江町の旧神川中学校はひとつのモデルケースとなるのかもしれません。

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