古里で北イタリアの味 シェフ牧谷さん、富山県小矢部市の山麓に開業

レストラン兼宿泊施設をオープンさせた牧谷さん。自ら育てた野菜などを使う料理を提供する=小矢部市屋波牧

 富山県小矢部市の山麓にあり過疎化が進む屋波牧(やなみまき)集落で、北イタリア料理を提供するレストラン兼宿泊施設「ヴィバ・ラ・ヴィータ」がオープンした。同所出身のオーナーシェフ、牧谷政睦(まさちか)さん(52)が富山市中心部の店を移転。料理人を志してから約30年越しの念願だった、古里での開業を果たした。自ら育てる野菜やコメなど、多くの食材を地元でそろえ、客をもてなしている。

 牧谷さんは、大学生の時に料理の道を志した。イタリアで浸透していた「アグリツーリズモ」を本で知り、感銘を受けたことがきっかけ。観光客が農家に宿泊し、食や農の魅力に触れる取り組みで、自然豊かな屋波牧に生かせると考えた。

 大学卒業後は、将来的な小矢部での開業を見据え、富山市内のレストランで勤務。2000年から約1年半は北イタリアに渡って腕を磨いた。29歳だった02年に同市呉羽町で「ヴィバ・ラ・ヴィータ」を開店し、07年に富山駅近くの安田町へ移った。本格的な現地の味でファンをつくり、予約の絶えない人気店になった。

 現在は数世帯しか暮らしていない屋波牧で、オープンの準備を始めたのは5年ほど前。実家横の畑と田んぼで父から農業のノウハウを学んだ。幼なじみが住んでいた近くの木造2階建て古民家を購入し、新店舗としてリノベーションした。

 富山市内の店を今年3月に閉め、5月中旬に宿泊機能を加えた新店舗を開業した。1階は床の間や仏間の面影を残しつつ客席やワインセラーを配置し、2階はシャワーを備えた宿泊スペースとした。

 素朴で温かみのある北イタリアの郷土料理をフルコースで提供する。自ら育てたコシヒカリや、野菜約20種類をふんだんに使う。まき窯で調理する小矢部市のブランド肉「稲葉メルヘン牛」と「メルヘンポーク」も売りだ。

 店名はイタリア語で「健やかな暮らし」を意味し、完全予約制で営業する。牧谷さんは「自然の中で落ち着いた時間を楽しんでほしい。食と農をつなぎ、屋波牧をサステナブル(持続可能)な土地にしたい」と話している。

若いつぼみを食用にするアーティチョーク(手前)など、実家横の畑で育てる野菜
山麓にある古民家をリノベーションした「ヴィバ・ラ・ヴィータ」
提供する北イタリア定番のスープ料理

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