「一晩中明るい」欧州選手権、オシムの涙と緊急招集デンマーク、統一ドイツ決勝へ【サッカー「古今東西ナイトゲーム」の楽しみ方】(2)

オスロに行ったのは2002年の日本代表の遠征。シンプルなプラスティック製の入場券だった。提供/後藤健生

夏が近づくにつれ、Jリーグでもナイトゲームが増えてきた。蹴球放浪家・後藤健生は古今東西、さまざまな場所で夜の試合を楽しんできた。場所が変われば、ナイトゲームの様子も、それぞれ違うのだ。

■「一晩中明るい」スウェーデンの欧州選手権

夏至がワールドカップや欧州選手権(EURO)の頃なので、僕は夏至の日を海外で迎えたことが何度もあります。

1992年にスウェーデンでEUROが開催されたときもそうでした。この年も、夏至は6月21日でした。

夏は一晩中明るい北欧スウェーデンですが、逆に冬になったら昼間でも暗いわけです。だから、彼らにとって太陽の光は貴重なもの。夏至の日は、盛大なお祭りが行われます。

昼に公園を訪れると、芝生広場には木の葉や花で飾られた柱が立てられて、大勢の人が集まって肌を露出して太陽の光を浴びて祝っていました。

1992年、ユーゴスラビアでは内戦が始まっており、イビチャ・オシム監督率いる同国代表は予選を突破していたのに、国連の制裁によって出場停止となり、デンマークが代替出場することになりました。すでに夏のバケーションに入っていたデンマークの選手たちは緊急招集され、そのデンマークが優勝してしまったという大会です。

■統一ドイツとしての「初の国際大会」で躍進

6月21日の夏至の日には、準決勝の第1試合、スウェーデン対ドイツが行われていました。統一ドイツとしての初めての国際大会で、ドイツは前半8分にFKからのボールをトーマス・へスラーが決めて先制。カール=ハインツ・リードレがさらに2点を追加。ギド・ブッフバルトらの守備陣がスウェーデンの反撃を2点に抑えて勝利して、決勝進出を決めました。

試合開始は20時15分でしたから、終了は22時を過ぎていましたが、もちろん空はまだ昼間のように明るかったわけです。

さて、真夜中はどんな光景になるのでしょうか……。

記者会見が終わって(ドイツの監督はベルティ・フォクツでした)、ホテルに帰り着くと、もう23時をだいぶ過ぎていました。そこで、僕は深夜24時に外がどんな光景になるのか、ホテルの部屋でビールを片手に窓の外を観察することにしました。

幸運なことに、窓は北向きでした。つまり、沈んでいく(いや、沈まない)太陽を見ることができるわけです。

太陽は地平線に近づいて、西北から真北の方向に横に移動していきます。そして、ビル群の中に沈んでいきました。しかし、赤く色づいた空は暗くはなりません。しばらくすると、空の明るさが再び増してきました。そして、再び太陽が地平線に姿を現わすというわけです。

■霧のブエノスアイレスで「コパ・アメリカ」開催

ストックホルムの緯度は北緯59度20分。本当の「白夜」がみられる北極圏(北緯66度33分)までは、300キロ以上の距離があります。

ちなみに、僕はストックホルムより少し北(北緯59度50分)にあるノルウェーのオスロにも行ったことがあります。ただ、このときは夏至ではありませんでしたし、「世界で一番物価が高い」と言われるオスロだったので、白夜どころではありませんでした。

6月にはワールドカップやEUROだけでなく、コパ・アメリカも行われます。

今年のコパ・アメリカは北アメリカ(合衆国)での開催ですが、普通は南半球の南米大陸で開催されます。

南米の中でも緯度(南緯)が高いアルゼンチンやウルグアイに行くと、6月21日は冬至に当たるわけです。ブエノスアイレスの緯度は南緯34度ですから、ちょうど日本と同じくらい。つまり、ブエノスアイレスの6月(冬)は、日本の12月と同じなのです。

しかも、ブエノスアイレスは湿度が高くて、霧が立ち込めることもあるので、寒さが身に沁みます。

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