6月18日のニンテンドーダイレクトにて、HD-2D版『ドラゴンクエストIII』の最新映像が公開された。制作開始の発表からおよそ3年間音沙汰がなかったが、本作の発売日が11月14日であるということも明らかになり、SNSでトレンド上位に入るなど大いに盛り上がりを見せている。
そこで今回は、まもなく訪れるであろう「ロト伝説」の熱狂に先駆けて、これまで数々のリメイクを繰り返してきた『ドラクエ3』がどのような系譜を辿ってきたのか、HD-2D版の発売前に今一度振り返っておこう。
■時代のなかでもがきながらも語り継がれ始める伝説
元祖『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』は、ファミコン用ソフトとして1988年に発売された。
『ドラクエ』シリーズといえば、ゲームを起動するとおなじみの「序曲」が流れ、まだ見ぬ旅路に想いを馳せながらその壮大なメロディーにひとしきり酔いしれる……というのが定番の流れ。だが、ファミコン版においてはそうはいかなかった。
256KBという低容量での制作を強いられた『ドラクエ3』の始まりは、BGMやロゴの表示がカットされ、黒バックに英文字だけのシンプルなタイトル画面という、なんとも寂しい門出だったのである。
プレイにおいても、当時はセーブデータの脆弱性による不安が常に付きまとっていた。リセットボタンを押しながら電源を切ることでデータを保持できる“バッテリーバックアップ”機能を搭載してはいたが、「うっかりミス」でのデータの破損で涙を飲んだ人も多かったことだろう。
そうした現代のゲームではあまり見られない点も存在したが、職業や昼夜の概念、預かり所の導入など、現在までつながる新システムを導入し、ゲームボリュームも『1』や『2』を大きく上回るものに。結果として『ドラクエ3』は約380万本ものセールスを記録。大きな社会現象となり、「ロト伝説」の集大成として絶大な人気を集めた作品だった。
■世界観に深みを持たせるリメイク版の台頭
元祖であるファミコン版の発売から8年後、1996年に『ドラクエ3』初のリメイク作がスーパーファミコン版で発売される。
ステータスに影響を与えるキャラクターごとの性格システムや新職業・盗賊の追加、おなじみの収集要素である“ちいさなメダル”、遊びごたえのある「すごろく場」、クリア後の隠しダンジョンなど、さまざまな要素が追加され、もはや“別作品”ともいえるほどの大ボリュームとなっていた。もちろんタイトル画面にはBGMとロゴが入り、より壮大なスケールで『ドラクエ3』の世界に浸ることができた作品だ。
さらに2000年にはゲームボーイカラー版が発売。携帯ゲーム機として、場所を選ばずにプレイすることが可能になった。
特筆すべき追加システムとしては、“モンスターメダル”という独自の収集要素が追加されたことだろう。こちらは、敵を倒した時に確率でモンスターが描かれたメダルを獲得できるというものである。
全モンスターに銅・銀・金のメダルがあり、155番までの銀のメダルをすべて集めると隠しボスと戦闘ができる。しかし、当然ながら骨が折れる作業ではあるため、集めきる前に諦めてしまったプレイヤーも多かったかもしれない。
とはいえ、メダルは通信ケーブルを用いて交換することができ、「ゲームボーイ」という特性を生かした作品でもあった。過去作と比較して一部のセリフやBGMのカットなどはあったものの、モンスターのアニメーションの豊富さや収集要素が人気を博した。
■壮大な世界をスキマ時間に冒険する時代
さらに『ドラクエ3』は2009年、ガラケー版もリリースされた。
スーパーファミコン版で追加されていた「すごろく場」や、ゲームボーイカラー版の“モンスターメダル”など採用されなかった要素も多いが、通学・通勤の車内でポチポチとプレイすることができ、手軽さ重視でスキマ時間に物語を楽しむことができた。
2014年にはガラケー版をもとにしたスマートフォン版のリメイクも発売され、操作性やグラフィックの向上など、時代に合わせた変化を続けてきた。
そして2017年には、PS4と3DSでダウンロード専用のリメイク作品が発売。2019年にも同様のリメイク作がNintendo Switchにて配信された。
基本的にはスマートフォン版のシステムを踏襲しているが、大きな変更点としてはキャラクターやモンスターなどのグラフィックがドット絵からイラストになっていることが挙げられる。モンスターの詳細なデザインを楽しむことができる一方、戦闘時に敵がアニメーションで動くことがないため、昔からのファンはやや物足りないかもしれない。あくまでもナンバリングの新作や『ドラクエ』関連作が多数発売されている中、過去のシリーズをプレイできるという、こちらも手軽さが重視された作品だったということだろう。
元祖であるファミコン版から、時代の変化とともに新要素を追加しながら歩んできたリメイク版『ドラクエ3』の歴史。腰を据えてじっくりとプレイできるリメイク版としては、スーパーファミコン以来28年ぶりとなるファン待望の作品が、今回のHD-2D版である。
制作発表から3年の時を経て、ついに今秋発売が明らかとなった本作は、美麗な背景に馴染むドット絵のレトロなキャラクターが特徴的な「HD-2D」の技術が用いられており、これまでにない新鮮な『ドラクエ3』の世界を歩ませてくれることは間違いない。
当時ファミコン版でプレイしていた人から、ファミコンを見たこともないという若年層まで、幅広い『ドラクエ』ファンが楽しむことができるであろうHD-2D版。発売まで、これまでのリメイク版に触れることで『ドラクエ』熱を高めておくのも良いかもしれない。