捕獲イノシシの革活用 西会津の片岡さん、かばんブランド設立

「害獣として捕獲されたイノシシの革ならではの魅力を感じてほしい」と話す片岡さん

 西会津町のかばん工房「やまあみ鞄製作所」の代表片岡美菜さん(35)は22日、害獣として捕獲されたイノシシの皮を活用したかばんブランド「ZICA(じか)」を設立する。工房内に新たに設けた店舗スペースとウェブショップで販売を始める。片岡さんは「イノシシの革ならではの魅力を感じてもらいたい」と語る。

 神奈川県出身の片岡さんは、グラフィックデザイナーとして働いた後、都内のかばん製作所に転職。製造や修理などの技術を磨く中で「(以前訪れたことのある)会津で自然や文化を生かしたかばん作りがしたい」との思いを強くし、2020年8月に西会津町に移住した。地域おこし協力隊の制度を活用して町内にかばん工房を構え、素材の研究や商品開発に取り組んできた。

 協力隊として活動する中で、町内でイノシシによる農作物の被害が深刻化していることや、捕獲されたイノシシのほとんどが処分されていることを知った片岡さん。「いただいた命をただ捨てるのではなく、有効活用できるのではないか」。地元の猟師からイノシシの皮を譲り受け、小物の製作から始めた。

 皮に付いた肉片を刃物で削り取る作業からデザイン、縫製まで一貫して工房で行っている。イノシシの捕獲量は不安定で、手間はかかるというが「イノシシの革は柔らかくて軽く、大きな毛穴が特徴。害獣ならではの傷や染みが残る革は、ほかにはない雰囲気がある」と魅力を語る。

 3月に地域おこし協力隊を"卒業"し、念願だった店舗のオープンにこぎ着けた。ブランド名は「自然の暮らしの中で得た素材や文化など『直(じか)』に触れたものから現代の暮らしに合うバッグを製作したい」との思いから「ZICA(じか)」と名付けた。販売するのは5シリーズ10型。このうちトートバッグ中が3万1900円。片岡さんは「実際に店舗で商品に触れ、イノシシの革の魅力を感じてほしい」と笑顔を見せる。

 店舗の住所は西会津町野沢本町甲1229。営業日は毎月第1、3の土、日曜日、第2、4の月、火曜日。時間は午前10時~午後4時(日曜日のみ正午)問い合わせは同店(メールbagmaker.mina@gmail.com)か同店ホームページのフォームへ。

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