地区唯一のJA系スーパー閉店から半年…広さ110平方メートル、新たな店がオープン 「助かっています」「なかったら大変」 地域の熱意に応えたのは…“隣県のスーパー”

地区内で1軒だけだったスーパーが去年閉店した倉吉市関金町、地区の人達の熱意でおよそ半年後に新しい店がオープンしました。
住民にとって欠かすことのできない存在となった「関金ストア」に密着すると、地域の人の営みが見えてきました。

5月のとある日曜日、午前9時、関金ストアの開店です。

間もなくやってきたのは美容師さん。子どもが巣立っていったため今は独り暮らしとのこと、食料品を買いました。

美容師さん
「近くにお店ができてとても助かっています。」

倉吉市関金町にはAコープせきがね店がありましたが、JA系のスーパー閉店の流れの中で去年9月25日に閉店。
地区内唯一のスーパーがなくなると住民が買い物に困ると、関金地区振興協議会が新しい店の開店を模索しました。
その熱意に応えたのが、県境を挟んで隣り合う岡山県真庭市のスーパー「みかもストアー」でした。

みかもストアー 田葉井浩人社長
「関金地区振興協議会の方々が、なんとしてでも関金にお店を残したいという熱い思いに影響されて、私もなんとか力になれないかと思って決断しました。」

古くなったAコープの店舗ではなく、市役所の関金支所も入る関金総合文化センターのロビーを新しい店用にと改装し、今年3月末にオープンしました。
110平方メートルほどと小さな店ですが、肉や魚、野菜などの生鮮食品、酒や飲料、お菓子、日用雑貨まで、ぎゅっと詰め込むように並んでいます。

10:00、やってきたのは高齢の男性2人のお客さんです。

男性客
「兄弟です」
「僕大阪に住んでるんですよ、今こっち帰ってくるからね、それで来たんですよ。」

ふるさとでひと月ほど過ごす予定とのこと、これからも便利に買い物ができるふるさとであって欲しいと願っています。

男性客
「ここできなんだら倉吉までバスで行くんですよ、買い物にね。
だから良かったですよ、なかったら大変ですわ、ここなかったらね」

10:10、やってきたのは女性と男性、2人は親子だといいます。
お母さんは88歳、米子に住む息子は月に2回ほど様子を見にやってきます。
息子のためにお母さんが腕を振るうのでしょうか。

女性客(母)
「なんか足らんなあと思う時寄せてもらうのに便利がいいな、へへへ。」

10:40、商品が到着しました。仕入れは1日2回、真庭のみかもストアーから運ばれてきます。
小さな店でもなるべく多くの種類を並べるよう心掛けています。
住民の数も限られる中での店の経営、レジはひとつにして、人数も最小限で切り盛りしています。

オープンの3月末からこの店で働き始めたのは、中野昌子さん。

関金ストア 中野昌子さん
「(慣れましたか?)そうですね、徐々にですけども、自分なりには慣れたかなと思います。
できて良かったという声をたくさんのお客様から聞いているので、本当に良かったなって思います。」

11:00、せわしない様子で入ってきたのは70代のご夫婦。

男性客(夫)
「前は農協の方で買い物しとったんだけど、あれがなくなって。
でも良かった、これができてな。がんばってもらうだわ。…もういいかい?もう帰りたいだ、これから畑仕事が待っとるんだ。」

13:00、お昼時から午後にかけて、店には次々とお客さんが来ました。
コンビニでは買えない生鮮食品など、スーパーならではの品ぞろえを期待してやってくるお客さんたち。

14:30、お孫さんを連れて、女性のお客さんが来店しました。
お孫さんは北栄町に嫁いだ娘の子、週末には家族で関金を訪ねてくれます。

女性客(祖母)
「孫と、練乳を買いに来たんですけど、ほかに見ていいものがあったと思って買いました。飲み物とかね。
やっぱりこれがあるとちょこっと買い物ができてすごくいいですね。
(お孫さんと一緒だと楽しいですか?)楽しいですね、癒されます。」

住んでいる人だけを見ればお年寄りの割合が高い関金地区でも、出身者が訪れたりして、若い人たちもやってきます。
思い立った時にすぐ買い物ができる環境は、小さなコミュニティを維持するため必要不可欠です。

みかもストアー 田葉井浩人社長
「従業員にはなるべくお客さんと会話してくださいと日々伝えています。大手のスーパーでは声を掛けてくれないところを地域密着だからこそ、顔と名前がわかるお客さんだからこそ、できるサービスを提供していけたらなと思っています。」

15:00、親子3人連れ、岡山県の蒜山からやってきました。
関金とは県境を挟んですぐのところです。

蒜山から
「初めてだったけど、お菓子とか買えてよかったです。これ、チョコを買いました。」

地元の熱意で生まれた関金ストアはまだ船出したばかり。ここで暮らす人たちや訪れる人たちの役に立ち、長く愛される店になるようにと、地道な営業が続いています。

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