友との別れ…嬉しい再登場も“雨の日”だった…バトル漫画に登場した「忘れられない雨の描写」3選

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今年も雨の季節がやってきた。雨は時に気分を暗くさせるが、漫画界においては重要な演出シーンであり、雨をバックにしているからこそキャラクターたちの成長や心情がより強くわかることも多い。

そこで今回は、人気少年バトル漫画に登場した「忘れられない雨の描写」を紹介したい。雨のなか、カッコよく登場するキャラクターたちのセリフや心情にも注目である。

■心の雨に濡れながら友との別れ…『鋼の錬金術師』ロイ・マスタング

まずは、荒川弘さんの『鋼の錬金術師』(『月刊少年ガンガン』スクウェア・エニックス)に登場する、悲しい雨のシーンを紹介したい。

本作に登場するマース・ヒューズは、娘と妻を愛する中佐だ。彼は戦友でもあるロイ・マスタング大佐に仕事と称して電話をしては家族の自慢話をしたりするような、おちゃらけた一面を持つ愛されキャラクターでもある。

切れ者でもあるヒューズは、ある時、軍上層部の巨大な陰謀に気づいてしまう。その事実を知らせるべく即座にマスタング大佐に電話をするものの、敵であるホムンクルスによって殺害されてしまった。

そしておこなわれたヒューズの軍葬の日。「どうしてパパ埋めちゃうの?」と聞くヒューズの幼い娘のセリフがなんとも悲しい。

その後、ヒューズの墓の前でマスタングは1人たたずんでいた。部下のホークアイが「…大丈夫ですか?」と尋ねると「大丈夫だ」と言って帽子を被りつつ「──いかん 雨が降って来たな」とつぶやく。“雨なんて…“と答えようとするホークアイに対し、マスタングは頬をつたう涙とともに「いや 雨だよ」と答えるのであった。

実際に雨の描写ではないこのシーンだが、マスタングの心には冷たく悲しい雨が降っていたことが分かる。プライドが高く、孤高の戦士といったイメージのあるマスタングが流した一筋の涙雨に、多くの読者はより悲しみを募らせ、グッと来てしまったことだろう。

■さらにパワーアップした聖闘士の誕生『聖闘士星矢』

車田正美さんの代表作である『聖闘士星矢』(『週刊少年ジャンプ』集英社)にも印象的な雨のシーンが登場する。それは新たな戦いの幕開けとなった「ポセイドン編」での序盤シーンだ。

主人公・星矢をはじめとした青銅聖闘士は、「黄金聖闘士編」での偽の教皇・双子座のサガをついに倒す。しかし激闘の末、ダメージを負った星矢ら4人は、集中治療室で意識不明の状態にあった。

そんななか、大雨を降らせ地球に大災害を巻き起こす海皇ポセイドンが現れる。ポセイドンの部下・テティスは、五老峰の大滝にいる老師の前に現れ事実上の宣戦布告をし、さらに戦えない青銅聖闘士の代わりに黄金聖闘士を集めるよう通達する。

しかしその時「そんな心配はいらないぜ」という4人の姿が。それは、意識不明であったはずの青銅聖闘士、星矢、紫龍、氷河、瞬の4人の姿であった。

雨の降る渓谷で完全復活を遂げた4人が登場するシーンはカッコいい。ポセイドンのせいで地上はずっと雨が降り続いていたが、その雨を止めて世界各地の災害から救うべく完全復活を遂げた青銅聖闘士たち。

雨雲に閉ざされ長らく太陽を見ていない地上の人々だったが、「彼らがきっと見せてくれるじゃろう この暗雲をはらいのけて希望に輝く明るい太陽をな…」という老師のセリフが印象的だった。

■雨降って地固まる!? さらに成長した主人公の姿『ドラゴンボール』

最後は鳥山明さんの国民的人気漫画『ドラゴンボール』(『週刊少年ジャンプ』集英社)に登場した雨のシーンを紹介したい。

本作の人気イベントである「天下一武道会」。その23回目の大会では、主人公・孫悟空をはじめお馴染みメンバーが激しい雨のなか、待ち合わせをするシーンから始まる。相変わらずの亀仙人やウーロン、さらに大人びて美しくなったブルマが再会を果たし喜ぶなか、「おっす!」「じっちゃん 生き返ってよかったな!」のセリフとともに、一段と成長した悟空が登場するのだ。

見慣れないターバン頭で現れた悟空に最初は誰だか分からない様子を見せる一同だったが、徐々に雨が弱まるのとともにターバンをほどき、お馴染みのヘアスタイルが登場する。たくましい青年となった悟空の姿に、お馴染みのキャラたちはもちろん、多くの読者が驚いたことだろう。

悟空はそれまで子どもキャラとして数々の困難に立ち向かってきた。「雨降って地固まる」ということわざは、“それまで色々な困難があったものの、前より良い状態になっていること”を意味する。

この雨の待ち合わせシーンは、そんな悟空の状態を表すのにピッタリのシチュエーションであり、これからの悟空の活躍をさらに予見する演出だったとも言える。

雨の日が続くと、ちょっと嫌な気分になってしまうこともあるだろう。しかし漫画のなかで雨のシーンは、それまでとは違う気分や雰囲気を演出するのにピッタリであり、なくてはならない描写だ。

とくにちょっと気の滅入る梅雨の時期は、お気に入りの漫画を読んで天候も気分も晴れるのを待ってみてはいかがだろうか。

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