23年度の近代建築、土門拳記念館(酒田)を選出 ドコモモ・ジャパン・県内4件目、連続空間の美しさ評価

「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」に選ばれた土門拳記念館=酒田市

 歴史的・文化的価値がある近代建築を選定するDOCOMOMO Japan(ドコモモ・ジャパン)「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」の2023年度選定建築物が21日に発表され、本県から酒田市の土門拳記念館が選ばれた。連続する空間の美しさ、建設に向けて市民が寄付集めに尽力した点などが評価された。県内の建築物の選定は4件目で、14年ぶり。

 DOCOMOMOは近代建築の保存に取り組む国際的学術組織で、1988年に設立された。約80の国・地域が加盟し、日本支部は日本建築学会内のワーキンググループを母体に2000年に発足。活動の一つとして、近代建築の好例を選定している。今回は、原則1920(大正9)年以降で完工から35年を経過した建物を対象に選定。新規10件、追加認定1件が今回加わり、計290選となった。本県では寒河江市庁舎、梅月堂(山形市)、長者原発電所(小国町)が選ばれている。

 土門拳記念館は、酒田市出身の写真家土門拳の作品展示・収蔵を主とし、83(昭和58)年に建てられた。日本初の写真専門美術館で、建築家谷口吉生さんらが設計。飯森山公園内にあり、池に面した「大壁」、イサム・ノグチの彫刻が建つ中庭、池に張り出した記念室、勅使河原宏による作庭「流れ」と、「訪問者がたどる空間のシークエンスが豊かで美しい」と評価された。当初予定していた国の補助が受けられず、市民の尽力で寄付を集めたエピソードも加味された。

 所有する酒田市の矢口明子市長は「建築価値が認められ、喜ばしく思う。土門拳記念館を市の貴重な財産として、設計思想とともに未来に向け継承していく」とコメントした。

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