県漁協、5地区で再構築 「選択と集中」で新ビジョン

  ●事業所や施設集約

 能登半島地震で甚大な被害を受けた漁業の復旧、復興に向け、石川県漁協は22日までに新たなビジョンをまとめた。現行の27支所・出張所を将来的には5地区に分け、事業所の統合や製氷施設などの集約化を視野に、持続可能な水産業を再構築する。地震発生で休業が続く漁師の操業再開を最優先とした上で、漁業者の減少など慢性的な課題に対応して海の創造的復興を図るため、「選択と集中」に取り組む。

 5地区は、加賀市からかほく市までを「金沢ブロック」、宝達志水町から志賀町までを「羽咋ブロック」、輪島市を「輪島ブロック」、珠洲市と能登町を「鳳珠ブロック」、穴水町と七尾市を「七尾ブロック」とする。具体的な構想実現の時期は明記していない。

 ビジョンでは、操業の再開を望む漁業者が多いと強調する一方、単なる復旧では時間も費用も膨大となるため、全てを元通りにするのは難しいとしている。その上で、選択と集中の重要性を指摘し、施設の集約化に加え、水揚げ、流通拠点の再編整備、信用部門のスリム化なども掲げている。

 県漁協を巡っては、地震発生前の2019年度からコスト削減や業務の効率化を図るため、27支所・出張所を9地区に再編する計画を進めていた。背景には、漁師の減少に歯止めがかからないことがある。

 漁業関係者の間では、震災前と同様の復旧を望む声がある一方、将来的に漁師が減れば、復旧させた施設を維持するコストがかえって重荷になるのではないかとの懸念もある。実際、県などによると、東日本大震災の被災地では復旧した施設の維持が地元の重荷になっているケースがあるという。

  ●総代会で報告

 ビジョンは22日に金沢市の県水産会館で開かれた県漁協の総代会で報告された。冒頭、あいさつに立った笹原丈光組合長は「漁に出られない人はもうしばらく辛抱してほしい。漁に出られる人は頑張ってほしい」と結束を呼び掛けた。

 能登半島地震では、県内の漁港・港湾のうち9割以上が被災し、奥能登の共同利用施設の多くが損傷した。外浦地区では、海底隆起により、船が出せず、輪島などの漁師は半年近く休漁を余儀なくされている。

  ●「まずは操業再開」

 総代会後、県漁協の福平伸一郎専務理事は北國新聞社の取材に対し「まずは操業を再開できるようにするのが最優先。その上でビジョンの実現を目指していくことになる」と話した。

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