「地震ごっこ」を不謹慎と思わないで!“心の傷”をケアするために親が留意すべき5つの子供の言動

災害が起きると“心の健康”も気になることのひとつだ。被災体験による恐怖、先の見えない状態が重なると大人でもつらいが、子供のメンタルへの影響はさらに心配だ。

子連れ向けの防災講座を各地で開く、NPO法人「ママプラグ」の理事・冨川万美さんも、被災後に適切なケアができるかどうかは「その後の生活や健康に関わってきます」と訴える。

災害のショックで、子供が“心の傷”を抱えているサインはあるのだろうか。そして親はどのように向き合っていけば良いのだろう。対応のポイントは「我慢させないこと」だという。

子供が“地震ごっこ”で遊ぶことも

被災すると災害の衝撃がトラウマとなったり、住み慣れた家や大切な存在を失ったり、避難所で不自由な生活を強いられたりと、それまでの生活環境が崩れてしまうこともある。そうすると子供には、次のような変化が起きることがあるという。

・親から離れなくなる、小さな音にびくびくする
・体調不良や発疹などの症状が出る
・乱暴になり、落ち着きがなくなる
・災害を再現するような遊びをする
・退行行動(赤ちゃん返り)をする

中には、積み木などを揺らして倒す“地震ごっこ”(津波ごっこ)を始める子供もいるとのこと。親としては「不謹慎だからやめさない!」と言いたくなるが、ちょっと待ってほしい。

冨川さんは「こんな子だったっけ?と思うようなことをするかもしれません。ただ、それは『言葉にできない恐怖』が形を変えて出ているかもしれないのです」と訴える。

実はこうした変化は、ストレスや不安に対処するための正常な反応だという。大人は周囲に相談して“ガス抜き”できることもあるが、小さな子供は言葉や表現が成長段階にあるため、自分から何かを訴えることが難しい。心の恐怖やモヤモヤを自分なりに“軌道修正”した結果、行動や言葉が変わるケースが多いというのだ。

親は子供に寄り添って話を聞こう

子供の様子が変わったかもしれないと感じたら、親はどうすればいいのか。冨川さんは、行動や言葉を無理に止めさせるのではなく、寄り添って話を聞いてほしいと話す。

「(行動や言葉の変化は)スキンシップを増やしたり、怖かった気持ちを共有したりすることで徐々に戻っていきます。子供からのサインだと思ってほしいですね」

・抱きしめてあげる
・話を集中して聞いてあげる
・あいづちを打ち、言葉を復唱する
・否定せずに「そうだね」と共感する
・何を必要としているのか聞いてみる

まずはこのようなことを心がけ、子供の気持ちを受け止めてあげよう。親が抱きしめて「怖かったね、つらかったね」と声をかけるだけでも、心理的な負担は違ってくるはずだ。

1日5分でも「好きなこと」を楽しむ

それと併せて、ストレスや不安を和らげるケアも大切。冨川さんはゲーム、動画、食事、おもちゃなど「被災前にしていた好きなこと」を楽しむ時間を作ってほしいともしている。

「私が被災された方にお会いしてきて感じたのは、災害時でも息抜きすること、リラックスすることの大切さです。全てを我慢するのは酷ですし、ストレスもたまりやすいです。災害時だからこそ、好きなこと(好きなもの)は欠かさないであげてほしいですね」

例えば、子供が甘いものを好きなら、非常時に食べられるお菓子類を多めに備蓄しておき、食べられるようにする。アニメや漫画で好きなキャラクターがいるなら、そのぬいぐるみを用意しておくだけでも、安心感につながるという。

また、現代の子供にとってゲームや動画視聴は“日常の一部”になっているため、1日5分でも10分でも楽しめる準備があると良いとのこと。スマホや携帯型ゲーム機の「予備バッテリー」を複数用意しておくと、ライフラインが止まっても遊ばせやすいという。

冨川さんは「リラックスすることは大人にとっても大切です」と話す。親は平常時から家族を観察して、笑顔になる出来事やタイミングを知っておくだけでも備えとなるはずだ。

深刻な場合は助けを求めよう

ここまで親ができることをお伝えしてきたが、子供のストレスが深刻かもしれない、緊急の対応が必要かもしれないと感じたら、助けを求めることも考えてほしいという。メンタル関連の専門家や医療機関のほか、災害時は自治体が相談窓口を開設することもあるので、そうしたところを頼ってもいい。

メンタルは災害の発生直後は問題ないように見えても、後から不調になることがある。子供の様子に少しでも変化を感じたら、ストレスや不安を抱えていないか親は注視してほしい。

冨川万美
特定非営利活動法人MAMA‐PLUG(NPO法人ママプラグ)理事。青山学院大学卒業後、大手旅行会社、PR会社を経て、フリーランスに転向。東日本大震災での母子支援を機に、NPO法人ママプラグの設立に携わる。防災に対して、アクティブな姿勢で行動を起こす「アクティブ防災」を提唱し、全国各地でセミナーを行っているほか、東京都の「東京防災」「東京くらし防災」編集・検討委員なども務める。二児の母。

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