子供がいる家庭に避難所は「いづらい場所」?在宅避難も考えて“家の安全性”を少しでも高める防災対策

みなさんの家庭では、災害が起きた時の生活拠点をどこにするか決めているだろうか。「とりあえず避難所に行こう」と考えているなら、ちょっと待ってほしい。

「小さな子供や赤ちゃんがいる家庭にとっては、いづらい場所です」と指摘するのは、子連れ向けの防災講座を各地で開く、NPO法人「ママプラグ」の理事・冨川万美さんだ。

子連れは「在宅避難」を選択肢に

避難所では幅広いサポートを受けられるが、集団生活となることからプライバシーを守ることが難しく、感染症やトラブルとも隣合わせ。子供はストレスをため込みやすい環境だという。

「子供が夜中に泣きだして周囲の視線が気になった、赤ちゃん用のおむつが足りなくて相談したら『それどころじゃない』と言われた、という話も聞きます」(以下、冨川さん)

そのため、自宅が安全であればそのまま過ごした方が良い場合もあるという。この考え方は「在宅避難」 と呼ばれていて、東京都などの自治体も選択肢として提案しているほどだ。

避難所の収容人数には限りもあるため、
・自宅で暮らすことが難しい、危険性が高い=避難所で生活する
・自宅やその周辺に、倒壊・火災・浸水などの恐れがない=在宅避難で様子を見る

といった判断で考えてほしいともしている。もし、家族で在宅避難をするならどんなことをしておけば良いのだろうか。日常からできる備えを冨川さんに聞いた。

自宅の「危険な場所」を対策しよう

在宅避難できる自宅にしたいなら、冨川さんは“片づけ”がポイントと話す。

物が散らかっていると災害の衝撃で飛んできたり、コンロなどの火が燃え移って火事が起きるリスクがある。防災グッズも必要なタイミングで見つからなかったりするという。

そこで日常の整理整頓のついでに、物が割れたり、家具類が倒れたり、ガラス類が散乱したりする「危険な場所」がないかをチェックしてみよう。

自宅にはさまざまな空間があるが、冨川さんが特に注意してほしいとするのが「キッチン」。食器類が落ちてくる、調理器具(包丁など)が飛ぶ、家電が倒れる可能性があるという。

対策としては、こうしたことができるそうだ。
・鍋などの重たい物は低い場所で保管する
・食器棚の扉にストッパーを付ける
・調理家電の下に耐震用のマットを敷く

「ストッパーは小さな子供が扉を開けることも防げます。食器棚や家具などの耐震性能を強化できるパーツもありますので、ホームセンターで探してみてはいかがでしょうか」

子供部屋は「逃げ道」を確保して

また「子供部屋」にも危険がたくさん。教科書や図鑑がしまってある学習机、部活動のトロフィーを置いた棚など、重たい物があふれているという。

「親から『何かあったら和室へ逃げるように』と言われていたきょうだいが、東日本大震災に遭遇した話を聞いたことがあります。子供部屋から和室に逃げて無傷でしたが、子供部屋はめちゃくちゃになっていたそうです。そのままいたら下敷きになっていたといいます」

この経験を踏まえて、子供部屋では
・頭部に物が落ちたり、倒れたりしないようにする
・逃げられるよう、避難の導線を確保する

ことを勧めている。災害は睡眠中にもやってくるので、枕元やベッド周辺には落ちてきそうなものを置かない、家具は部屋のドアをふさがないような配置にもしておきたい。

バスルームでは「けが」に注意

そして、見落としがちなのが「バスルーム」。基本的には裸でいると思うので、災害の衝撃で鏡や窓ガラスが割れるなどしてけがをしやすいという。そこでこうした対策をしてみよう。

・鏡や窓ガラスに飛散防止シートを貼る
・高い場所のラックに重い物を置かない

このほか「トイレ」では、廊下にある物が倒れて閉じ込められる可能性もある。このため、「ドア付近には物を置かない」ことや、「携帯電話などの連絡手段を持つ」ことを意識してみよう。

さまざまな防災対策を紹介してきたが、自宅のあらゆる所に対策するのはお金と手間がかかるものだ。冨川さんは「家族が安全に眠れて食事できそうな部屋」があるなら、そこを重点的に強化するものアリだと話す。

「例えば、寝室が比較的安全なら、窓に『飛散防止シート』を貼るなどして安全性を高めても良いです。その場合はキッチンなど、危険性が高い場所には『できるだけ入らない』と決めておきましょう」

食料品の備蓄もしておこう

在宅避難するなら、食料品や飲料水を用意しておくことも忘れてはならないポイントだ。最低でも3日分、できれば1週間は暮らせるように、レトルト食品や缶詰などの日持ちする食料を「ローリングストック」(日常で消費しながら備蓄すること)しておこう。

また、災害時は電気・ガス・水道などが止まる可能性もある。自宅でも温かい食事がとれるように、カセットコンロやガスボンベを持っておく、断水に備えて簡易トイレを用意しておくのもお勧めだという。

在宅避難のメリットは冒頭でお伝えしたが、一方で「物資が入手しにくい」とか、「情報が伝わるのが遅くなりがち」といった側面もある。災害の後は二次災害が起きる可能性もあるので、孤立しないように、周囲との連携や情報の入手も心掛けてほしい。

冨川万美
特定非営利活動法人MAMA‐PLUG(NPO法人ママプラグ)理事。青山学院大学卒業後、大手旅行会社、PR会社を経て、フリーランスに転向。東日本大震災での母子支援を機に、NPO法人ママプラグの設立に携わる。防災に対して、アクティブな姿勢で行動を起こす「アクティブ防災」を提唱し、全国各地でセミナーを行っているほか、東京都の「東京防災」「東京くらし防災」編集・検討委員なども務める。二児の母。

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