「幽霊かなと思った」深夜の車道の真ん中に男子児童が…勇気を振り絞った23歳女性看護師の“とっさの判断”

事の始まりは、心霊体験かと思わせるような、信じがたい光景だったといいます。

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浜松市中央区に住む看護師の笠井美咲さん(23)は5月2日午後11時頃、勤務が終わり、自宅へと車を走らせていました。そこで目撃したのは、三差路の車道の真ん中に立つ1人の男子児童の姿でした。

「幽霊かなって、思いました」
信じられない状況に、仕事の疲れで幻覚を見たかと思ったそうです。

「いまのは何?」
気になった笠井さんはすぐ近くに車を止め、車道にたたずむ男の子に声をかけました。

「どうしたの?」
笠井さんの問いかけに、男子児童からは返事がありませんでした。それからほどなくして、男子児童は突然動き出し、笠井さんを車に押し戻したといいます。

「このままでは、車にひかれてしまうのでは」
不安に駆られた笠井さんでしたが、近づきすぎると逃げられてしまうのではと感じ、歩き出した男子児童と少し距離をとって、後を追うことにしました。

「こんな夜間に1人にしちゃいけない」

「こんな夜間に1人にしちゃいけない。守ってあげなきゃ」
スマホで最寄りの警察署に連絡し、警察官が現場に来るまで、男子児童を見守り続けようと決意した笠井さん。電話をつなぎっぱなしの状態で居場所を伝えつつ、男子児童が歩道から車道にはみ出そうとした時だけ、さっと近づき、支えていたと話します。

結局、駆け付けた警察が男子児童を保護。この男子児童(10)には、家族から行方不明届が出されていて、警察が捜索を続けていました。

警察が現場に来るまでに要した時間は約10分。命の危険が脅かされるような場面は、結果的にはありませんでしたが、笠井さんにとっては、気の遠くなるような時間だったそうです。

男子児童の保護に大きく貢献してくれたとして、警察は笠井さんに感謝状を贈呈。不審な子どもを見た人が通報をしてくれることは、間々あるものの、通報しながら、最後まで子どもを見守り続けるというケースは、あまり聞いたことがないといいます。

「車道に飛び出して、車に接触とかも無くて、安全にご家族のもとに返せてよかった」
笠井さんは、自分の力ではどうにもならなかったと当時の事を振り返りました。

子どもに声をかけると不審者扱いされてしまうリスクのある今の世の中。そんな中で彼女がふり絞った勇気と、その行動力が1人の少年を救ったことは事実です。

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