芸能人ゲーム乱立の80年代に異彩! ファミコン史に残る「クセつよRPGの迷作」が35周年

『ラサール石井のチャイルズクエスト』(編集部撮影)

『たけしの挑戦状』(タイトー)に『さんまの名探偵』(ナムコ)、または『所さんのまもるもせめるも』(エピックソニー)、『中山美穂のトキメキハイスクール』(任天堂)、『聖飢魔II 悪魔の逆襲』(CBSソニー)といったものまで、ファミリーコンピュータの時代には芸能人やタレント、プロスポーツ選手や歌手などの著名人の名を関するゲームは、ひとつ格上な印象がありました。そのなかでも飛びぬけて個性的なゲームのひとつだったのが、本日で発売から35周年を迎えたファミコンソフト『ラサール石井のチャイルズクエスト』(ナムコ)です。

■実在のアイドルグループを育成するゲームなれど、主人公はラサール石井じゃない?

本作はその名の通り、かつてタレントのラサール石井さんがプロデュースした、磯野貴理子さんらが在籍していた3人組お笑いアイドルグループ「チャイルズ」をスターにするというゲーム。

「ラサール石井」に「チャイルズ」とふたつのタレント名がついたゲームはそうそうありません。本作はチャイルズとのタイアップとして、今から35年前となる1989年6月23日に発売されたゲームで、本作のテーマソングともいえるシングルCDも出ていました。

さて、『ラサール石井のチャイルズクエスト』というタイトルから読み取るに、主人公がラサールさんを操ってチャイルズを育てていくゲームと思いそうなところですが、実は違います。プレイヤーはチャイルズの新人マネージャーで、ラサールさんのアドバイスをもらいながらワガママいっぱいのチャイルズをなだめつつ芸能界を渡り歩いていくのです。……そう考えると、『アイドルマスター』のご先祖的な、ナムコらしいゲームと言えるのかもしれませんね?

■ナムコらしいユーモアあふれるRPG! よく回る口と図太さを武器に芸能界を戦い抜け!

アイドルを育成する本作ですが、そのジャンルはなんとRPG。かつてPCエンジンのテニスゲーム『プロテニス ワールドコート』(ナムコ)では『ドラクエ』のパロディ的な「クエストモード」がありましたが、本作はその発展型ともいえるほど、ギャグとお笑いに満ちたRPGに仕上がっています。

とはいえ、本作はあくまでチャイルズを育てるゲーム。ですから装備品は「アイドルのマイク」や「きらめきのドレス」などチャイルズを美しく仕立てるものばかりで、最前線で彼女らを育て売り込むマネージャーは「やすものの背広」一枚のみ。しかし、レベルアップしてマネージャーとしての腕を上げることで、体力を回復したり、チャイルズの不満を解消できる不思議なマネージャーの法……すなわち「マ法」が使えたりするようになるのです!

■ヨイショし倒してファンをゲット! その裏でおもらしの処理するマネージャーの姿が……

マネージャーのレベルを上げる方法は、RPGらしくバトルで経験値を稼いでいくほかありません。しかし、そのバトルも個性的で、攻撃方法はなんと「よいしょ」! 出会った人たちから受ける罵詈雑言を一身に受け、よいしょで褒め殺すのがマネージャーの戦い方です。これによりマネージャーはレベルアップしてよいしょが上手くなり、チャイルズの人気もアップして一石二鳥。よいしょされて気持ちよく去る敵に、「チャイルズを、チャイルズをよろしくお願いしますっ!」という感じで営業でもかけてるのかもしれませんね。

人気アイドルになるべくマネージャーに付いていくチャイルズ。画面上では4人パーティに見えますが、実はマネージャーの後ろについていってるだけでバトルには参加してくれません。それどころか、旅を続けていくうちに不機嫌になっていき、不満がたまると営業が失敗してしまいます。さらにはいい大人(?)のはずのチャイルズがおもらしをしてその対処に奔走したりすることもあって、アイドルのマネージャーって大変だな……としみじみ思わせてくれます。

■人気者になって、いつかはときおホールでコンサートを!

ゲームの目的は人気アイドルになることですが、その目標は「ときおホール」でコンサートを成功させることです。

そこに至るまでに出会う人たちをよいしょし、デパートの屋上でキャンペーン活動を行なったりして地道に人気を稼いでいかなければなりません。芸能界は派手なイメージがありますが、現実はさておき、ゲーム的にみると結構地味です。でも、その地味さ加減はおバカなノリで払拭されいて、とても気楽に遊べるRPGになっています。芸能界に興味のある人やチャイルズのファンだった人、そしてバカゲー大好きな人にぜひ触ってみてほしいゲームです。ただ、ゲームのバランスはちょっとキツめなのでご注意を。

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