雨傘を「コウモリ」、雨着を「かっぱ」と呼ぶのはなぜ? 梅雨時期に知りたい 雨具の名前の由来とは

梅雨の時期の外出に欠かせない傘(写真はイメージ)【写真:写真AC】

梅雨のシーズンが本格化。外出時に雨具が手放せない時期がやってきました。雨具の代表といえば傘。「コウモリ傘」と呼ぶことがありますが、なぜコウモリなのでしょうか。また、レインウェアを「かっぱ」や「雨がっぱ」といいますが、その由来とは? 日本古来の伝承や風習、先人の知恵など諸説に着目するこの連載。今回は、雨具のコウモリやかっぱについて紹介しましょう。

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洋傘を開くとコウモリに似ていたことが由来

古くから日本には、雨や雪、日光などが当たらないよう頭にかぶる道具として、イグサやヒノキなどで作られた笠がありました。柄のついた傘はもともと、貴族など地位が高い人に従者が日除けや魔除けとして差しかける、大きな「差しかけ傘」が主流だったようです。小ぶりで実用性のある和傘が広まったのは、12世紀以降とみられています。

和傘は、竹や木、糸などを材料にした骨組みに和紙を張り、植物油を引いて防水を施したものです。自由に開閉できる和傘が作られるようになったのは、器具が開発された江戸時代になってから。和傘には番傘、蛇の目傘などがあり、人々の生活必需品として親しまれていったそうです。

また、日本独自の特徴として、傘は雨や日光を除けるだけでなく、魂や神様が降りてくる依り代とも考えられてきました。現代でも、神様への感謝や五穀豊穣、先祖供養を目的に寺社で開催されるお祭りの多くに傘が登場するのは、このためだといわれています。

和傘に対して、洋傘が西洋から入ってきたのが19世紀頃。洋傘は「アンブレラ」、または「蝙蝠(コウモリ)傘」と呼ばれました。コウモリといわれた理由は、開いた際の黒い傘骨と布の様子が、コウモリの飛ぶ姿を連想させたためと伝えられています。また、人間の最も大切な頭上に掲げることを「こうむる」とし、「こうむり傘」という名称が関係しているとの見方もあります。

今では、お手頃価格でカラフルなものが売られていますが、コウモリ傘が日本に持ち込まれた当初は高価でした。一般庶民は手が出せない代物だったそうです。

雨着のかっぱの由来はカッパではない?

雨が降ったときに着用するレインウェアを「かっぱ」または「雨がっぱ」と呼びます。川や池などに住むと伝えられる「河童(カッパ)」と関係している印象がありますが、漢字で書くと「合羽」となり、カッパとは別物です。

かっぱは、ポルトガル語の「capa」に起源があるといわれています。16世紀前後、ポルトガルから来航した宣教師たちが防寒用に着ていた「袖がなく裾が広い上着」を指し、日本でも真似て作られるようになったそうです。「capa」は「かっぱ」と呼ばれ、漢字で「合羽」と表現されるようになりました。合羽は単なる当て字という説もありますが、人が着ると両翼を合わせた鳥に似ていることが由来しているともいわれています。

もともと、かっぱの素材はラシャ(厚手の毛織物)製で、戦国時代の大名たちは最高級のラシャで作られたかっぱを身辺に置いたそうです。江戸時代になると木綿や桐油紙が素材として使われ、袖つきの形も登場。庶民にも広まっていきました。明治以降、防寒用のものを「マント」、雨具用を「かっぱ」や「雨がっぱ」と呼ぶようになったそうです。

以上のような背景から生まれた、コウモリ傘やかっぱという呼び名。今はあまり使わない言葉になっているかもしれませんが、古くから伝わる雨具に関する豆知識として紹介しました。お気に入りの傘や雨着で、うっとうしい梅雨の外出を少しでも快適にしたいですね。

鶴丸 和子(つるまる・かずこ)
和文化・暦研究家。留学先の英国で、社会言語・文化学を学んだのをきっかけに“逆輸入”で日本文化の豊かさを再認識。習わしや食事、季節に寄り添う心、言葉の奥ゆかしさなど和の文化に詰まった古の知恵を、今の暮らしに取り入れる秘訣を発信。

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