衆院選にらみ動き加速 福島県関係の現職議員、相次ぎ地元入り

会津若松市で開かれたイベントであいさつした小熊氏(右)と菅家氏(左)。国会が事実上閉幕し、衆院選に向けて地元行脚が本格化している

 自民党派閥の政治資金パーティーの裏金問題や政治資金規正法改正案の審議に揺れた通常国会は21日に事実上の閉会を迎えた。今後は9月の自民党総裁選後とみられる衆院解散・総選挙をにらみ、各陣営の動きが本格化しそうだ。週末となった22日には福島県関係の現職衆院議員が相次いで地元入りし、地盤固めにいそしんだ。総選挙を見据えた動きが徐々に加速している。

 衆院小選挙区の「10増10減」に伴う区割り見直しで、会津と県南が含まれた福島3区。会津若松市で開かれた催しには、次期衆院選に立候補を予定する与野党の現職が顔をそろえた。

 「これからも皆さまの生活を守るため全力で働いてまいりたい」。自民党の菅家一郎氏(比例東北、4期)はあいさつで物価高騰の影響に言及し、こう語った。裏金問題では党の処分対象となるなど大きな批判を浴びた。5期目となれば政権や党の要職も視野に入るだけに「これから地元を歩き、丁寧に説明していく」と信頼回復に腐心する。

 一方、立憲民主党の小熊慎司氏(旧福島4区、4期)は政局に触れず、菅家氏とは対象的に手短にあいさつを終えた。党県連代表として菅家氏との5度目の戦いを控える。自民の裏金問題は追い風にも見えるが「失ったのは政治自体への信頼だ」と語る。区割り変更の影響もあり「油断できるような状況ではない」と警戒する。

 自民、強い危機感

 「全滅する可能性もあり得る」(本県関係の自民党衆院議員)。裏金問題の渦中にいる自民は、本県関係の複数の議員が党の処分を受けるなど、強い危機感を抱く。各議員は今後、地元に軸足を移して信頼の回復に努める考えだが、県内の党員からも批判の声が出るなど現状は厳しい。

 やまぬ逆風に党県連も焦りを募らせる。比例を含めた現有5議席確保のため戦略の再構築を模索するが、幹部の一人は「去年の県議選とは全く空気が違う。戦略を立てられる状況ではない」と苦慮する。福島4区の動向も気がかりだ。支部長で現職の吉野正芳氏(旧福島5区、8期)は近く進退を判断するとみられており、判断次第では対応が迫られることになる。

 立民、引き締める

 前回衆院選で県内5選挙区のうち3選挙区を制した立民は、四つになった選挙区全てでの勝利を掲げる。全国では島根1区など衆院3補選や静岡県知事選で勝利を重ね、県連幹部は「県内はこれまでも良い形で勝負してきた。全勝を目指し活動を展開する」と見据える。

 しかし、立民も盤石といえる状況にはない。与党への逆風にもかかわらず、立民の支持率は伸び悩み、福島4区では候補者擁立が難航する。立民、社民、国民民主各党県連と県議会会派「県民連合」、連合福島でつくる5者協議会の枠組みは維持されるが、区割り見直しの影響は未知数だ。今後の政局で状況が変わる可能性もあり、衆院議員の一人は「(追い風が)いつ逆風に変わってもおかしくない」と気を引き締める。

 次期衆院選は、共産党の新人熊谷智氏が立候補を表明し、流動的な面が残る福島4区を除けば、県内各選挙区は与野党対決が有力視されている。

 ただ、一時的に強まった解散風が収まり、有権者の受け止めは冷静だ。現職2人がそろって姿を見せた会津若松市の催し会場。2人の話を聞いた同市の60代男性は「(国会は)政治資金の話ばかりだった。国内や県内にたくさんの課題がある中、もう少し実のある議論はできなかったのか」と冷ややかだった。

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