かつて新婚さんでごった返した温泉街は、今やシャッター商店街。「にぎわいよ再び」。官民一体の「レトロピカル指宿」構想が動き出した

買い物客でにぎわう指宿中央通り商店街の朝市=指宿市湯の浜1丁目

 鹿児島県指宿市のJR指宿駅近くの指宿中央通りで、商店街再生に向けた取り組みが始動した。月1回の朝市でにぎわいを創出し、老朽化が進むアーケードは撤去する計画。関係者は「地元の人も観光客も、みんなが歩いて楽しめる通りにしたい」と見据える。

 16日朝、商店街には買い物袋を提げた人々が次々と行き交った。指宿中央通り未来協議会が第3日曜日に開く「いぶすきマルシェin商店街朝市」。家族で訪れた同市十町の自営業、曽木眞愛さん(28)は「お祭りほど並ぶこともなく、好きな物をゆっくり買える。次回も来たくなった」と気に入った様子だ。

 3回目のこの日は市内外から約40店舗が出店し、雑貨や植物、弁当などの商品が並んだ。未来協議会のメンバーで、朝市実行委員会の道下克雄さん(53)は「出店者も増え、手応えは感じている。さらに周知して指宿観光の足掛かりとなるような催しに発展させたい」と語る。

◆◇◆

 朝市は、2028年度までの5カ年計画で取り組む事業の第1弾としてスタートした。かつて市民や観光客でにぎわった商店街は、大型店の郊外進出や車社会の浸透でシャッターを閉めた店が目立つ。約1年前から通りの商店主らが活性化に向けて話し合い、4月に同協議会を設立して具体化させた。

 事業のもう一つの柱が、老朽化したアーケードの撤去だ。指宿中央通商店街振興組合が1977年に設置。リニューアルや改修など維持管理をしてきたが、近年は休止状態だった。塗装の剥がれや海風で腐食した部分が散見され、景観や安全性の面からも課題となっていた。

 早ければ今夏にも解体が始まり、来年度の完了を見込む。撤去後は壁面の補修や音響設備の整備、フラッグポールの設置を行い、通りの魅力向上を図る。総事業費約2860万円のうち約2000万円は県市町村振興助成金を活用、残りは会費や朝市の出店料などでまかなう。

◆◇◆

 周辺地域と一体的に盛り上げる構想もある。指宿中央通りは、JR指宿駅から指宿港海岸までを結ぶ市道だ。海岸では現在、国の直轄事業で砂浜を整備しており、27年度末の完成予定。隣接地には市がイベント活用もできる緑地帯を設ける計画で、市道も「レトロピカル指宿」をイメージした舗装にすることなどを検討しているという。

 今後は空き店舗をいかに埋めるかが課題となる。市商工水産課は「出店希望者の紹介や相談などの支援をしていきたい」とする。同協議会も農業・水産業者との連携に加え、面積の広い空き店舗をチャレンジショップとして活用できないか模索する。

 同協議会の溝口剛会長(47)は「朝市を通じて通りに興味を持つ人が増えれば、新規出店にもつながるはず。将来的には、かつての新婚旅行ブームでにぎわった時代に近い状態まで戻すのが理想」と意欲を見せる。

老朽化が進み、撤去される指宿中央通り商店街のアーケード=指宿市

© 株式会社南日本新聞社