ルイ・ヴィトンCEO、スポーツがブランドの「DNA」体現 パリ五輪控え

ルイ・ヴィトンの特徴的な格子柄がパリ五輪に花を添える/CNN

パリ(CNN) 感極まる選手たち、歓喜に沸く観衆、色とりどりの旗で埋め尽くされたスタンド――。オリンピックやパラリンピックの代名詞ともいえるおなじみの光景だ。そして来月開催されるオリンピックでは、ルイ・ヴィトンもまた、この壮大なイベントの象徴となることを望んでいる。

ルイ・ヴィトンの特徴的なダミエの格子柄トランクには、フランスを横断するオリンピック聖火が収められる。オリンピックとパラリンピックのメダルを収納するためのトランクも作られた。フェンシングのエンゾ・ルフォール、競泳のレオン・マルシャン、車いすテニスのチャンピオン、ポーリン・デルレード、パラサイクリングのマリー・パトゥイエなど、7人のフランス人選手もルイ・ヴィトンのアンバサダーを務める。

オリンピック、そしてオリンピックに出場するために選手たちがたどる並外れた道のりは、この仏高級ファッションブランドの中核を成す価値観と密接に一致していると、ルイ・ヴィトンの会長兼最高経営責任者(CEO)を務めるピエトロ・ベッカーリ氏は、パリのルイ・ヴィトン本社で行われたCNNのインタビューで述べた。

「我々は卓越性について話題にし、品質やあらゆる挑戦に備えることについて語ってきた。それは我々にとって非常に大切なことなのだ」。ベッカーリ氏は、ルイ・ヴィトンは「フランスのグループであることを非常に誇りに思っている」と言い添え、本拠地である「世界で最も美しい都市」で開催されるオリンピックを喜んで支援すると述べた。

サッカー・ワールドカップ(W杯)やF1モナコグランプリなどのイベントのトロフィー・トランクを手掛けるルイ・ヴィトンだけに、これらはありふれたトランクではない。各トランクには内側にマットブラックのレザーが使われた。トーチ・トランクには底とふたの部分に円形の「ソケット」が備え付けられ、オリンピック聖火を安全に収納して運ぶことができる。メダル・トランクは何百ものメダルを収納できる引き出しを備えている。

ルイ・ヴィトンを傘下に持つ高級ブランドのコングロマリット(複合企業体)のモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)はオリンピックとのスポンサー契約に1億5000万ユーロ(約255億円)を費やしたと、米ファッション誌ヴォーグは情報筋の話として報じた。だが、ベッカーリ氏はこの投資に対する正確なリターンを計算するのは「難しい」と述べている。

「このキャンペーンが価値と魅力を高めていると我々は信じている。それを数値化するのは非常に難しい。試みなかったわけではないが、非常に困難ないし不可能だ」

ルイ・ヴィトンは、アメリカズカップなどの洋上イベントのスポンサーを務めるほか、最近ではテニス界のレジェンド、ロジャー・フェデラーとラファエル・ナダルの友情をテーマにしたキャンペーンを展開したりするなど、長年スポーツと関わってきた。

「我々はスポーツと非常に密接な関係にある」と語るベッカーリ氏は、2010年にFIFAワールドカップのトロフィー・トランクを製作した際に使用されたスローガン「Victory Travels in Louis Vuitton(勝利の喜びを乗せて旅するルイ・ヴィトン)」を回想した。

「これはルイ・ヴィトンのDNA、つまり先ほど私が述べた挑戦、自分自身に勝ち、目標にたどり着き、もっと先へ進んでより多くを発見しようという意欲を見事に体現していると思う」

このメッセージは、イタリアのドロミテ山脈の雪山でルイ・ヴィトンのトランクに座り、2人のライバル関係や最大の功績、スポーツ界のヒーローについて語るフェデラーとナダルの新キャンペーンの基盤となった。

ベッカーリ氏は「彼らは欧州の異なる二つの地域にある小さな村から出発した2人の美しい若者だったが、今の彼らになった。時間をかけて何度も自分自身を超えていくことは、卓越性、品質、羨望(せんぼう)の哲学の一部なのだ」と語った。

ルイ・ヴィトンは昨年、過去最高益を記録し、LVMHは他の高級ブランドの業績を上回った。だがインフレが進み、消費者の可処分所得が減少している現在の経済環境は、前途に課題を突きつけているものの、ベッカーリ氏はこれを重要視していない。

「危機という点に関しては、常にチャンスを見極める勇気が必要であり、それが我々の仕事だ。そして曲線がある。我々はスピードを出して曲線を進むことを好むため、再び道がまっすぐになったときには、他社よりも先を行くのに十分なスピードが出せるのだ」

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