相談できず「孤立出産」と告白 殺人と死体遺棄罪に問われた女 横浜地裁で24日初公判 学校通えなかった過去も

被告から送られてきた手紙

 妊娠を明かせず一人で出産した女性が、乳児の遺体を遺棄したなどとして罪に問われるケースが後を絶たない。2022年、自身が出産した乳児への殺人と死体遺棄の罪で起訴されたタイ国籍の女の被告(25)の裁判員裁判初公判が24日、横浜地裁で始まる。被告は公判を前に神奈川新聞社の取材に応じ、誰にも相談できない「孤立出産」だったと告白。長く学校に通えなかった過去や、「自分の気持ちを伝えるのが苦手で、昔から相談することができなかった」心情などを語った。    

 被告と記者は計5回面会し、手紙のやりとりも行った。被告は自身の生い立ちや妊娠・出産の経緯を語る時は毎回涙をあふれさせ、声を詰まらせた。 

 埼玉県出身。幼い頃に両親が別居したため父親の記憶はあまりなく、タイ国籍の母親と2人で暮らしていた。日本で生まれ育ち、話せるのは日本語のみ。母子家庭で忙しく働き、日本語があまり得意ではなかった母親とは「壁があり、いつも気を使っていた」。母親から「『おまえなんて産まなきゃよかった』と言われたこともあった」と明かした。

 被告が学校に通い始めたのは小学5年の6月ごろ。それまで、なぜ自分は学校に行けないのか分からなかった。

 背景を知ったのは、今回の事件後。当時、母親は離婚しようと思っていたが夫に応じてもらえず、そのうちに別の男性との間に被告が生まれた。母親は父親の名前を書いた被告の出生届は出せないと考え、悩んだ末に届け出なかったという。その後、弁護士の支援を受ける機会があり、約10年の時を経て、ようやく届け出たという。

 学校生活は「土台がないし、勉強に追い付くのに必死だった」。特別支援学級で学んだ。同級生からはいじめられた。理由は分からなかった。「たぶん浮いてたのかな。近寄ったら遠ざかられたり、トイレで土下座させられたり。毎日つらくて嫌だった」

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