「エリック」主演のベネディクト・カンバーバッチ──「とても独創的で夢中になった」

ベネディクト・カンバーバッチが主演と製作を務めたヒューマンサスペンス「エリック」。息子が行方不明になり、後悔にさいなまれる中、次第に妄想にとらわれていく人形クリエーターの父親・ヴィンセントを、カンバーバッチがエキセントリックに演じている。

── 本作との出合いを教えてください。

「脚本家のアビ・モーガンと会い、彼女がこの話を切り出した瞬間、私は夢中になった。彼女は素晴らしいストーリーテラーで、この複雑で問題を抱えた人物・ヴィンセントの旅路、彼とほかの登場人物たちを取り巻くドラマ、そして彼が創造した人形がリアルになるという構想に私を引き込んだ。とても独創的だと感じたんだ」

── 演じたヴィンセントはどんな人物ですか?

「彼は冒頭で転機を迎えている。まだ本格的な危機には至っていないが、かなりひどい状態なんだ。子ども向けのテレビ番組の仕事が危うくなり、彼はこの仕事が、愛情の少ない不幸な幼少期の救いになっていることに気付く。それに、結婚生活もすれ違いが生じていて、息子が行方不明になった時、彼は再び精神的に不安定な状態に陥り始める。現実とヴィンセントの現実の間には分裂があり、彼はその両方にしがみついて、必死に息子の方へ戻ろうとするんだ」

── ヴィンセントが作り出すモンスターのエリックとはどんな存在ですか?

「エリックは気分を変える存在だ。口の悪い相棒から、言えないことを言える存在まで、あらゆるものになり得る。彼はヴィンセントにとって、段階によってさまざまな存在となる。ヴィンセント、エリック、そしてエリックの声を共同制作できたのは素晴らしい経験だった。私だけでなく、ヴィンセントの一部であるこの創造物を見た時、それは彼の心の声のように聞こえるはずです」

── 役作りのためにどんな準備をしましたか?

「かなり準備をしたよ。あの時代の人形劇、ジム・ヘンソンの世界全体を見てみたんだ。人形劇のワークショップで人形劇の操作にも慣れた。音楽、文化、その時代に移り変わるすべてのもの、政治、社会悪。ヘンソンの時代についての素晴らしいドキュメンタリーを見た。また、メンタルヘルスの問題やその現れ方にも目を向けた。妻のキャシーとヴィンセントについてアビに質問し続けるという、いつもの準備のようなこともした。最も大変だったのは最初の数日間の撮影だった。アパートのシーンはすべて撮影したので、あっという間に家庭内のドラマに突入したよ」

── 本作の中の家族との共同作業はいかがでしたか?

「妻役のギャビー・ホフマンと一緒に仕事をすると、自分が自白剤を与えられているような気分になる。ごまかすことができないんだ。彼女はとても協力的で、寛大で、親切。彼女の仕事ぶりを見ていると、自分ももっとうまくやろうという気にさせられる。そして、息子・エドガー役のアイヴァン・モリス・ハウは、訓練を受けていない素晴らしい俳優で、とにかくかわいかった。私は彼を守り、いとおしく感じると同時に、カメラが彼の自然で効果的な演技に見入ってしまうことに驚嘆した。撮影に入る前お互いに少し知り合えたことは、重要だったと思う」

── 本作では、1980年代のニューヨークをどのように捉えていますか?

「すべての偏見や制度上の問題は、あらゆるところに存在する。これは、人々が自分の家を見つける物語です。子ども、ホームレス、ゲイの黒人警官、不幸な結婚生活を送る妻、番組のエリックでさえも居場所を見つけることがすべてなんだ。1985年当時の、エイズの大流行や同性愛嫌悪、警察における人種差別など、社会における恐るべき分断線を映し出し、すべてが一体となってドラマを盛り上げていくが、それは登場人物を信じ、彼らの状況を思いやる気持ちがなければ意味がない。それは、この町が焦点となる部分の脚本と構成において実現されている。市役所、ニューヨーク市警、地下鉄、ナイトクラブ、テレビスタジオ、ストリートなど実に多くの場所が登場するんだ」

【プロフィール】

ベネディクト・カンバーバッチ(Benedict Cumberbatch)
1976年7月19日生まれ。イギリス・ロンドン出身。ドラマ「SHERLOCK シャーロック」(2010~17年)でブレーク。映画「戦火の馬」(11年)、「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」(14年)、「ドクター・ストレンジ」(16年)などに出演。

【番組情報】

Netflixシリーズ「エリック」(全6話)
独占配信中

1980年代のニューヨーク。子ども向け番組を制作している人形つかいのヴィンセント(ベネディクト・カンバーバッチ)の息子・エドガーが行方不明になった。後悔にさいなまれたヴィンセントは、エドガーが考案したモンスターのエリックに命を吹き込めばエドガーが家に戻ってくると思い始め、人形作りに奔走するが…。

© 株式会社東京ニュース通信社