【社説】男女格差の解消 政治も経済も本腰入れよ

いつまでたっても男女格差が縮まらないのは、足踏みばかりで改革の速度が遅いからだ。社会全体でジェンダー平等の歩みを加速させたい。

スイスのシンクタンク、世界経済フォーラムが2024年版の「男女格差(ジェンダー・ギャップ)報告」を発表した。日本は146カ国の中で118位だった。

過去最低だった23年の125位から上がったが、低迷していることに変わりはない。先進7カ国(G7)の最下位で、近隣の韓国94位、中国106位よりも遅れている。

日本は性別によって「こうあるべきだ」と決め付けるジェンダー規範が根強く、格差の解消を阻んできた。

性別にかかわらず、その人らしさを重視するジェンダー平等の考え方は人権尊重そのものである。個人の幸せこそが社会の活力につながる。世界の多くの国と同様、日本も実現に全力を挙げたい。

報告は政治、経済、教育、健康の4分野で男女平等の達成度を評価している。日本は政治が113位、経済が120位に落ち込んでいる。

政治分野は今回わずかに改善し、全体の順位を押し上げた。昨年9月の内閣改造で、女性閣僚が過去最多に並ぶ5人に増えたからだ。

とはいえ、閣僚全体に占める女性の割合は25%に過ぎない。当時の人事で副大臣と政務官の54人全員が男性だったことも記憶に新しい。

衆院議員の女性割合が10%程度にとどまり、女性首相がこれまで一人もいないことも厳しく評価された。

多様な社会課題を解決するには、さまざまな背景を持った人が政策決定に関わる方がよい。国会も地方議会も議員が中高年男性に偏っている現状はあまりにいびつだ。

まずは女性候補を増やす必要がある。同僚や有権者からのハラスメント、長時間の選挙運動などが立候補をためらわせている。政党は対策に本腰を入れなくてはならない。

政党に男女の候補者をできる限り均等にするよう法律で促しているが、動きは鈍い。数値目標すら掲げない政党もあり、やる気を疑う。

政党の主体性に期待できないなら、候補者や議席に一定数の女性を割り当てるクオータ制の導入を本格的に検討すべきだ。女性擁立に消極的な党への政党交付金削減も超党派で検討されており、議論を進めてもらいたい。

経済分野の低迷は、管理職や役員に占める女性割合の低さが響いている。男女間の賃金格差も依然として大きい。

政府と経済界は長時間労働の解消や育児・介護との両立支援など、性別にかかわらず安心して働ける環境づくりを急ぐ必要がある。

経団連は今月、選択的夫婦別姓制度の実現を求める提言を発表した。ビジネスの現場で旧姓の通称使用は支障があり、女性に負担が偏っているとの指摘だ。障壁を一つずつ取り除いていきたい。

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