阪神・野口の現在地 昨年支配下登録→今春1軍キャンプ 1軍経験したからこその壁「自分のポイント分からなくなった」

 レフトスタンドへ本塁打を放つ野口=22日

 22日のウエスタン・オリックス戦(高槻萩谷)で今季1号を放った阪神・野口恭佑外野手(23)。2年目の今季は葛藤を続けている。昨年支配下登録を勝ち取り、今年の春季キャンプは1軍入り。とんとん拍子だったが、いまだ1軍出場は果たせていない。1軍を経験したからこそぶつかった壁、それを打破するために奮闘する現在地に迫った。

  ◇  ◇

 待望の一発だった。三回2死で田嶋の直球を捉え、打球は左翼芝生席に着弾した。191打席目での今季1号。昨季の“プロ1号”は51打席目だっただけに「めちゃめちゃうれしかった。今までかなり苦しんで、『やっと1本出た』って。今シーズンで一番いい打球だった」と安どした。

 22年度育成ドラフト1位で入団し、昨季はウエスタン67試合で打率・303、6本塁打、18打点。秋季キャンプでは岡田監督の目に留まり、支配下登録をつかみ取った。春季キャンプでも初の1軍入り。柵越えを連発して注目を集めたが、オープン戦では結果を残せず開幕2軍に。「見事に期待を裏切ってる」と自身でも苦笑いするほど、シーズンに入っても本調子ではなかった。

 開幕前に1軍を経験したからこそ、壁にぶつかったという。「去年はただピッチャーに向かっていくことしか考えてなかった。今年はちょっと上を経験して、思った通りいかない場面が多くて。そこで自分のポイントが分からなくなってしまったり、一番いい時の感覚をつかめてなかった」。一番の契機となったのが急きょ出場した3月23日・オリックスとのオープン戦(京セラ)。カスティーヨに2打席連続空振り三振し最後は投ゴロ。「変化球は質が違った。ボール球を振っちゃって、空振りしたくないという恐怖心を覚えた」。持ち味の積極的なスイングができなくなっていた。

 “らしさ”を取り戻すため、北川2軍打撃コーチからの助言もあり、「タイミング」を見直した。「動画を見たら、去年はもっとゆったり振れていた」と野口。余裕を持って振れるよう、始動を早めにするように意識した。他のことは考えず、「タイミング」だけに集中していることが奏功しているという。

 「今年は絶対1回は上がりたい。8月ぐらいには」と目標を掲げる。「寛さん(豊田)も1軍上がって。誰にも何も言われない結果を残して、上でいいパフォーマンスができたら」と同じ外野手の先輩に続きたい。「打率は3割2分くらい。OPS・800は超えたい。あとは打点も頑張りたい」。一発をきっかけに巻き返し、1軍に割って入る。(デイリースポーツ・山村菜々子)

 ◆野口 恭佑(のぐち・きょうすけ)2000年7月17日生まれ、23歳。長崎県出身。180センチ、88キロ。右投げ右打ち。外野手。創成館では1年秋からベンチ入りし、3年春夏に甲子園出場。九産大を経て22年度育成ドラフト1位で阪神入団。阪神・川原は同学年で創成館のチームメート。昨年ウエスタンで打率3割超など結果を残し支配下登録される。

© 株式会社神戸新聞社