【いま知っておくべき5つのニュース】ランサムウェアによる被害が広がる ほか[2024/6/13~6/19]

by 中島 由弘

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1. 最新のインターネット技術が集結「Interop Tokyo 2024」記事まとめ

最新のICT技術やソリューションを体験できるイベント「Interop Tokyo 2024」が開催された(クラウドWatch)。

この展示会は、1994年の商用インターネットの黎明期から始まり、“Interoperability(相互接続性)”の検証を展示会場で行うというところに醍醐味がある。かつてInteropは世界各国で開催されていたが、現在では日本でのみ開催されていて、今回で31回目となる。今年のテーマは「AI社会とインターネット」とされ、「より豊かな社会の実現に向けてAIがどう活用されていくのか」「AIを活用すれば膨大に増えていくデータ量に対応するために必要となるインターネットインフラとは」といった点を踏まえた講演、展示などが行われた(クラウドWatch)。

以下には、関連記事のヘッドラインを紹介するが、なかでも見どころの1つは最新ネットワークの検証をする「ShowNet」である。「ShowNetとは、最新のネットワーク技術やネットワーク機器などを相互に接続する場であり、それが実運用で動いている様子を見られるのが特徴だ。最初は出展社が利用するものだったが、ここ10年ほどはWi-Fiで来場者も利用するようになっている。それにより、『5年後や10年後のネットワークを、いままの最新のネットワークで体感いただく』」ということを実現している。

いまやインターネットは世界中の機器がつながって当たり前と理解されているが、こうした実証実験の場があったからこそ、現在のインターネットの技術基盤が構築されていると言っても過言ではない。異なったベンダーの機器、ソフトウェアが動くのはこうしたことの積み重ねの上にあるということを今年も改めて認識する。

ニュースソース

  • 「Interop Tokyo 2024」展示会が開幕、幕張メッセで14日まで[クラウドWatch
  • 今年も最先端のネットワーク技術がてんこ盛り――、Interop Tokyo 2024の「ShowNet」レポート[クラウドWatch
  • アイランドシックスとNEC、それぞれのブースで量子鍵配送による量子鍵暗号通信を展示[クラウドWatch
  • NTT Com、IOWNを使った「リモート“バーチャル”プロダクション」を実演[クラウドWatch
  • ヤマハ、ネットワーク機器と音響製品を展示 さくらのクラウド版vRXなども参考出品[クラウドWatch
  • ジュニパー、IPAとの800GbE相互接続伝送実証実験や“AI-NATIVE NETWORKING PLATFORM”を展示[クラウドWatch
  • Fortinet/Alaxalaは、FortiAIなどセキュリティ管理ソリューションを中心に展示[クラウドWatch

2. ランサムウェアによる被害が広がる

KADOKAWAがサイバー攻撃を受けたことは大きく報道されたところである。その原因について、ランサムウェア攻撃によるということも発表されている(Impress Watch)。影響はコンテンツやサービスだけでなく、バックオフィスにまで及び、出版事業全体への影響も甚大だとしている。こうしたランサムウェア攻撃による被害は、この5月下旬以降、顕著に広がっているという。影響は特定の業種に偏っているわけではなく、病院や自治体にも及んでいる。全ての業種において、警戒を強めるべきだろう(ITmedia)。

また、KADOKAWAと類似するメディア関係の企業としては、投稿型サービスの「小説家になろう」なども被害がある(ITmedia)。それぞれ、別の手法による攻撃ではあるようだが、メディア企業でのサイバー攻撃の被害が目立つというのは偶然の一致なのかだろうか。

ニュースソース

  • KADOKAWA、サイバー攻撃の影響を発表 経理・出版事業を優先対応[Impress Watch
  • 小説投稿サイト「ハーメルン」にDDoS攻撃 「なろう」「カクヨム」も一時障害 関連を疑う声も[ITmedia
  • ランサム攻撃の被害相次ぐ、5月下旬から各所で 企業だけでなく自治体、病院にも影響[ITmedia

3. 経営体制の転換を模索するOpenAI

ロイターが報じたところによれば、生成AIを開発するOpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏は、「非営利の理事会が管理しない営利目的企業への転換」を検討しているという(ロイター)。

サム・アルトマン氏は「理事会が検討しているシナリオの一つとして『ベネフィットコーポレーション』に言及した。これは利益を追求すると同時に社会的な目標達成を目指すもので、同業のアンソロピックやxAIが採用している」と述べている。

この記事からは、こうした変更がどういう意味を持つのかは不明だが、生成AIという社会的な大きなインパクトのある企業の経営体制については、社会全体でその意味を理解をし、オープンなかたちを目指すべきではなかろうか。多くのソフトウェア企業の1つとしての経営問題というわけにはいかないのではないか。

また、OpenAIは、元米国家安全保障局(NSA)長官兼米サイバー軍司令官のポール・ナカソネ氏を取締役に迎えたと発表している(ITmedia)。

ニュースソース

  • オープンAI、営利目的企業へ転換も CEOが示唆=報道[ロイター
  • OpenAI、「安全およびセキュリティ委員会」に元NSA長官のポール・ナカソネ氏[ITmedia

4. G7サミットでも生成AIに関する議論が行われた

イタリアで開かれたG7サミット(主要7か国首脳会議)は、議論の成果をまとめた首脳宣言を採択して終了した(NHK)。

多くの国際情勢を取り巻く課題の1つとして、生成AIについても議論されている。NHKの報道によれば、「日本は、G7の枠にとどまらず、共通のルール作りを進めていくことが重要だ」と主張したという。また、AIへの関心が高いとされるローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇なども出席した。その場では、岸田総理大臣が「AIは、人類の発展にとって大きな可能性を秘める一方、偽情報の拡散やサイバー攻撃を含むリスクも生じさせる。世界中の人々が安全、安心で信頼できるAIを利用できるためのガバナンスの形成が急務である」と述べたという。また、fフランシスコ教皇は「AI=人工知能をめぐり、依存しすぎれば人としての判断力を失うことにつながるとした上で、AIで自律的に標的を選んで攻撃する兵器は禁止すべきだ」と訴えたという。

一方で、生成AI技術は大手IT企業が巨額の予算を投じて開発競争を行っている。さらに、G7以外の各国でも各々の事業を踏まえた規制を検討している。急速に進む生成AIの革新に対して、懸念が表明されるだけで、具体的な議論が追いついていないようにも感じる。

ニュースソース

  • G7 首脳宣言採択 ウクライナへ新たな支援明記 中国をけん制[NHK

5. “死者の演説”は認められるのか?

NHKは、「“死者の演説”は認められる? 選挙での生成AI利用 どこまで」を掲載している(NHK)。インドネシアでは、すでに亡くなっているスハルト元大統領が生成AIによって映像として甦り、演説をしているというのだ。そして、この例にとどまらず、「世界各地で、選挙でより多くの票を得ようと、生成AIを利用する動きが広がっている」というのだ。カリスマを復活させることで、選挙民の求心力を得ようということか。

今年は世界的な選挙イヤーであるということは言われてきたが、こうした生成AIを使った手法はどこまで許されるのだろうか。そこに、落とし穴はないのだろうか。日本でも東京都知事選挙が公示された。この記事を参照して、そうしたことを考えてみるきっかけにしてほしい。

ニュースソース

  • “死者の演説”は認められる? 選挙での生成AI利用 どこまで[NHK

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