ドローン「有人地帯の目視外飛行」へルール策定 本県特区に指定

 長崎県とともに市街地のドローン飛行に関する国家戦略特区指定が決まったことを受け、県は本年度、長崎県や国と連携し、ドローンの「レベル4」飛行と呼ばれる「有人地帯の目視外飛行」の安全確保に向けた運航管理のルールを策定する。ルールには飛行可能な時間帯や、機体に必要な装置などを盛り込む方針だ。今月中に予定される特区の正式指定後に実証試験の準備に着手し、市街地でのドローンを使った配送サービスの実現につなげたい考えだ。

 規制緩和、レベル4飛行での安全対策検討

 県が想定する主なルールは【表】の通り。市街地でドローンを目視外飛行させる場合、現行の法規制ではルートごとに国土交通省の許可を受ける必要があり、配送など注文に応じて飛行経路を変更することはできない。特区に指定される両県では、利便性の確保に向けて許可をエリア単位とする規制緩和の導入を目指す。ただ、規制緩和は飛行の安全性の担保が前提となるため、国の諮問会議は本年度中に安全対策を検討するよう求めている。

 安全確保に向け、飛行可能な時間帯は夜間や通勤・通学時間帯などに飛行制限を設けることが検討される見通し。機体に必要な装置については、周囲を確認できるカメラのほか、光や音などで飛行場所を周囲に知らせる仕組みの必要性が議論されそうだ。

 長崎県では2022年にドローンで離島に医薬品などを届ける取り組みが始まり、35万回を超える配送実績がある。ただ、運用は港湾など無人地帯を飛行する「レベル3」にとどまっている。一方、本県ではドローンによる商品配送の実証実験などが行われてきた。

 ルールの策定と併せて準備を進める実証実験で本県は、福島ロボットテストフィールド(南相馬市、浪江町)周辺に進出するロボット関連企業の技術力を活用したい考えだ。3月に牛丼のドローン配送を実証した際はイームズロボティクス(同市)のドローンを使用しており、同社などとの連携を検討するほか、ほかの企業の参入にも期待する。

 急速な人口減少が進む本県では将来、各地で商店などが減り、買い物が不便な地域が増える可能性が指摘されている。トラック運転手の残業時間が制限される「2024年問題」や人手不足による運送業の縮小も全国的な課題で、ドローンによる無人の自動配送の実現への注目度は大きい。

 県は「自動で飛行するドローンを使った配送が実現すれば、買い物の利便性、運送業の人手不足の問題を一度に解決できる」(次世代産業課)として、まずはルール作りを急ぐ考えだ。

© 福島民友新聞株式会社