湘南から羽ばたく世界の舞台へ - ウインドサーフィンiQフォイル級シニア強化選手、新嶋莉奈選手にインタビュー<前編>

鎌倉で生まれ育った湘南人アスリート

現在24歳の新嶋莉奈選手は、生まれも育ちも鎌倉材木座の海という生粋の湘南人。
4歳の時に、プロウインドサーファーである父の影響で初めてボードに乗り、小学4年生から全日本ジュニア選手権5連覇という偉業を成し遂げます。14歳で挑んだユースオリンピックでは史上最年少出場し7位入賞という成績をおさめるなど、世界に舞台を広げて実績を積み重ね、更なる活躍が期待される国内トップクラスの選手です。

今回 は「Last Chance Regatta」から帰国されたばかりの新嶋選手にお話を伺いました。

画像出典:エリエール

新嶋莉奈選手プロフィール

平成11年11月13日鎌倉生まれ
横浜国立大学附属鎌倉小学校卒業
横浜国立大学附属鎌倉中学校卒業
慶應義塾女子高等学校卒業
慶應義塾大学商学部卒業
エリエール所属

高校生からRS:X級(オリンピック艇)に転向
2016年 ISAFユースワールド日本代表選手として2大会連続出場
2017年 ウインドサーフィンで初の6位入賞を果たす
2018年 特別強化選手としてナショナルチームに抜擢
2021年 RS:X級からiQフォイル級に変更
2022年 大学卒業後エリエール(大王製紙(株))と所属契約を結び、ツアー4戦全勝 国内ランキング1位
2023年 フレンチオリンピックウィークで銀メダル獲得、iQフォイル級で日本人初の表彰台に

画像出典:公益財団法人日本セーリング連盟

4月に開催された「Last Chance Regatta」では、あと1歩という結果になりましたが…

莉奈:「応援してくださった皆様に申し訳ない気持ちがあって…自分のすべてを出し切っていい環境が作れていたのは、これまで支えて下さったスポンサーの方々や家族のおかげだと思うので、今は本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

笑顔の奥には、深い感謝の思いと、少しだけ安堵感を滲ませた悔しさが潜んでいたように感じます。

今はどのように過ごしていますか?

莉奈:「ゆっくり休んでいます。実は去年の夏ぐらいから増量のしすぎでずっと体調が悪くて。練習できない時期もあったり、世界選手権などいくつかの大会でも代表だったのですが棄権してしまったりして。今も血糖値が安定しないところもあって整えている最中です。」

画像出典:湘南人

2024パリオリンピックのセーリング競技では、これまでの「RS:X」に代わって「iQフォイル」がウインドサーフィンの艇として採用されました。
iQフォイル級とは、水中翼による浮力を体重で抑え、前に進む力へと変えていくため、RS:X級に比べて適正体重が重く、70kg必要と言われています(RS:X級の適正体重は約58kg)。
もともと53〜54kgだった新嶋選手は食事量を増やして増量に挑みますが、体調が悪くなり10kgほど痩せてしまうなど増減量を繰り返していたため、体には相当の負担があったのでしょう。
インタビューの中でも、増量の苦しさを何度もお話しされていたのが印象に残りました。

ウインドサーフィン一色だった学生時代

プロウインドサーファーだったお父様(現:セブンシーズ代表)の影響で、4歳から活動をされている新嶋選手。練習の厳しさや、他競技への興味もそれまでは感じなかったそうですが…

莉奈:「小学5年生位かな、チームメイトがどんどん辞めてしまって。私もオリンピックを目指すためにコースレースを始めたので関東学院大学の部活に混ぜてもらってたんですけど、そこには友達もいないし、大人に混じって子供が1人でいるっていう環境での練習は、正直メンタル的にも体力的にもキツかったところはありましたね。」

画像出典:エリエール

それでも続けられたウインドサーフィンの魅力とは?

厳しい練習や体重管理に加え、友達と遊ぶ時間もなかなか取れない。それでも競技を続けられたウインドサーフィンの魅力は何だったのでしょうか。

莉奈:「やっぱりエンジンを使わずに風の力だけでどこでも行けるっていう、非日常的な感じがとても楽しいと思います。私のやっている競技では、女子で50km/h、男子だと60km/hのスピードが出るのです。海面を飛ぶように海風とスピードを感じながら、レースによっては選手それぞれの考え、例えばコース取りや風のつかみ方、相手選手との駆け引きなど、速さだけではない面白さが観ていてもあると思います。」

レース中に思わず泣いてしまうことも…

セーリング中、つい他事を考えてしまう時はありますか?

莉奈:「集中力が途切れてしまうことがあるので、練習中にぼーっとしてしまい怒られることがあります。その時は韓国の好きなアイドルの事を考えていたりして(笑)TWICEとStray Kidsが好きで、たまに歌っています。」

モチベーションが上がるものを持っていることも大事ですよね。

画像出典:湘南人

レースが上手く運べなかった時の対処法はありますか?

莉奈:「私は切り替えるのがあまり上手くない方で…今はレース中には泣かない!って決めています。ユースの頃はレース中でも結構泣いてしまっていたのですが…どれだけ悔しくてもどれだけダメだって思っても、もう泣かないようにっていつも心がけていました。でも考えてみると、そうやって追いこんだ方が私は成績が出る方なので、そこは自分にプレッシャーをかけながらやっていました。大変でしたけど(笑)。」

弱い自分を理解してそれに打ち勝つ強さこそ、アスリートの持つ美しさのひとつなのですね。
インタビューは<後編>に続きます。

【セブンシーズ:ウインドサーフィンスクール】

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エリエール「新嶋莉奈」

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