【守り紡ぐ・県警発足70年】夫婦で駐在、公私充実

県警が初めて配置した夫婦の駐在所で、県民の治安確保を誓う大和さん(左)と麻美さん(右)。美和ちゃんの笑顔も2人の力の原動力だ

 近年の働き方改革の潮流は、県警にも大きな変化を生んだ。約15年前に「休み返上、残業上等」の姿勢で働き詰めだったある男性警察官は、今では「県民の安全・安心を守ることは不変」としつつ、「今の時代はしっかり有給休暇を取って公私を充実させることが大切。要はめりはりかな」と話すようになり、同一人物とは思えないほどの変貌を遂げている。

 尾浜が「第1号」

 県警は現在、警察職員のワーク・ライフ・バランス(WLB)充実など、多様な働き方を推進する組織に向けてかじを取る。その一つが相馬署尾浜駐在所で2018年に誕生した県警第1号の「夫婦駐在」だ。地域にとって一番身近な駐在所で、夫妻が力を合わせて職務に当たる。

 配置には、女性警察官の増加に加えて警察官同士の結婚も増えたという背景もあった。赴任したのは、16年に結婚した亀岬大和(だいわ)さん(47)、麻美さん夫妻。駐在所赴任前は別々の署で勤務していたが、日夜業務に励む仕事の性質上、擦れ違いが生じたこともあった。同じ職場になり「一緒に過ごす時間が増えた」と振り返る。

 職場では「部長」

 駐在所では夫婦が机を並べて勤務することになったが「自分たちの仕事は地域の治安を守る警察官」という思いを重視。いずれも巡査部長の2人は公私の区別をつけるため、職場では互いに「部長」と呼び合い、敬語を使って勤務した。2人は「お互いの仕事を知っているからこそ、連絡は密にできた」と話す。夫婦としての会話は、執務室を出た後に心がけた。

 赴任後、2人の間には長女美和ちゃん(2)が生まれた。間もなく第2子を出産予定の麻美さんは現在産休中。ただ、大和さんが不在の際は来客対応などを行い、地域の警察の"顔"として力を合わせる。

 「仕事と家庭を両立できる環境など、働き方はたくさんあっていい」。子育てや介護などの事情で精神的負担を感じることのない「多様な働き方を受け入れる職場づくり」は県警にとって今後も一層充実させるべき重要なテーマだ。

 女性警察官 現行の警察制度で本県では1993年に誕生した。男性の割合が圧倒的に多い職場だが、徐々に女性の割合が増加。県警の女性警察官の割合は昨年4月時点で11%で、2026年4月に女性警察官の割合をおおむね12%にする目標を掲げる。結婚や出産に左右されずに長く働ける職場環境づくりを目指す。

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