佐々木隆成が代表デビュー戦で存在感を発揮…「みんなの思いを背負いながらやろうと思ってきました」

6月23日、北海きたえーるで開催された男子日本代表の強化試合「日本生命カップ2024(北海道大会)」対オーストラリア代表との第2戦。日本は第1戦同様に序盤から効率よく得点を重ね2ケタ得点のリードを奪うも、その後はアップダウンを繰り返す苦しい展開に。ビハインドで迎えた試合終盤に猛追を見せ、結果は95−95というバスケットボールでは珍しい引き分け(親善試合でもあり、当初から延長戦を行わない取り決めのため)に終わったが、そのなかで代表デビューを飾ったひとりが28歳のポイントガード、佐々木隆成(三遠ネオフェニックス)だった。

出番は第2クォーター開始時にやってきた。河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)、そして富樫勇樹(千葉ジェッツ)という日本を代表する司令塔がプレーした後を継ぐ形でコートに。「試合前は緊張していました」と言う佐々木だが、実に落ち着いた表情でプレーに入っていく。

日本が31−23で迎えた開始40秒すぎ、エンドラインからのスローインを受け敵陣の3ポイントラインのトップ近辺までボールを運ぶ。ジョシュ・ホーキンソン(サンロッカーズ渋谷)とのピック&ロールか、富永啓生へパスか、動きを探る。二人が佐々木から離れるように左サイドに動いたその刹那、ペイントエリアにスペースが空いたことを判断するとすかさずドライブ。鮮やかにレイアップを決めてみせた。

その直後、相手との接触で右眉から流血していることが判明。開始1分19秒で一度ベンチに下がらざるを得なかったが、止血して約2分半後に再びコートに戻ってくると、臆することなく声がけを行い、攻守ともにガードとしての役割に徹し続ける。

出場時間は4分03秒、2得点1リバウンド1アシスト。短い時間ではあった。本人は口に出さなかったが、トム・ホーバスHCは試合後の会見で、佐々木が10日ほど前にケガしたことでチーム練習にあまり参加できていなかったことを明かした。それでも、「今日のプレーは良かったし、(時間が許される限り)もっと見てみたい」というホーバスHCの評価は、背番号「33」の存在をコートに刻むプレーぶりだった証左である。

「アクシデントはありましたけど、ドライブなど持ち味のスピードは出せたので、ある程度できたかなと思います。あとは得意のプルアップ3ポイントなどを出して、プレー時間を歩増やしていければと思います」

持ち味のドライブでアシストを演出 [写真]=野口岳彦

佐々木は天理大学卒業後、B2の熊本ヴォルターズで3シーズンプレーし、2022−23シーズンからB1の三遠に。移籍2年目の今季は千葉ジェッツの一時代を築いた大野篤史ヘッドコーチの元、再スタートを切ったチームの正PGとして活躍し、チーム史上初の公式戦中地区優勝の原動力になった。そうした過程を経て、今回、トップの日本代表に初招集となった。

「昨日から三遠の知り合いはもちろん、B2の熊本時代の知り合いからも励ましをいただきました。達成感は全然ないですが、熊本時代から、(佐々木の代表入りを)期待していてくれていたので、その点では(代表になれて)よかったです。

また、日の丸をつける責任感の重さは、ずっと感じてきました。ここまでの合宿でも日の丸をつけられなかった(チームを去った)選手たちも見てきたので、そういう人たちの分までやらなければ、みんなの思いを背負いながらやろうと思ってきました」

同じポジションには言わずもがな、に富樫、そして第1戦でプレーしたコンボガードのデーブス海(アルバルク東京)がいる。来週以降、渡邊雄太、八村塁(ロサンゼルス・レイカーズ)がチームに合流する可能性が想定されるため、パリ五輪ロスター12人枠に入るには、厳しい状況である。しかし、佐々木本人は、「選手選考をするのはチームスタッフの方々」と意に介さない。あくまで「僕がフォーカスすべきは僕自身のプレーをすること」とチームのなかで持ち味を出すーーそうした揺るぎない決意がこの日のプレーに表われていたのだろう。

今回、Bリーグではライバルとして対戦していた同じポジションの3人と時間を過ごすことで、学んだことも多かったという。

「一番は、試合に向かう準備ですね。具体的なトレーニングなども確かにあるのですが、それよりも言動などのすべて、本人から出ている雰囲気が日本代表としての高い意識を感じさせるものなんです。その辺りは、同じチームに身を置いてこそわかったことなので、すごく勉強になっています」

周囲のことは関係ない。佐々木はこれからも多くのことを吸収しながら、日々、自分にできることに全力を尽くして取り組んでいく。

文=牧野豊

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