「夏至」は日本だけのもの? 海外や日本でも、ロマンチックで温かい夏至の夜

 6月21日は、一年のうちで最も太陽が出ている時間が長くなる「夏至」の日だった。夏至といえば、日本の初夏を感じさせるイメージがあるが、実は海外にも夏至はある。

 例えば、スウェーデンのダラーナ地方には、キリスト教が始まる以前から続いているという伝統的な夏至祭「ミッドサマー」がある。民族衣装に花冠を被って踊りを楽しんだり、「酢漬けのニシン」や「新ジャガ」、「イチゴ」などを食べたりして、長い冬の終わりと夏の訪れを祝うのだという。このミッドサマーは、同名タイトルの映画の舞台にもなったことがあるので、ご存じの方も多いのではないだろうか。

 また、ポーランドの夏至祭はロマンチックだ。未婚の少女たちが花やハーブで編んだ花輪を川に流す風習があり、それを下流で拾った青年は花輪の少女と恋に落ちるという。実際に、それが縁で結婚したカップルも多いという。

 ところが、日本では実は、全国的に共通して行われるような夏至の伝統や風習はない。夏至の頃はちょうど農作業の繁忙期であることから、祭事ごとに発展しにくかったともいわれている。それでも、三重県伊勢市の二見興玉神社で行われる夏至祭には毎年、全国から多くの人が訪れたり、京都では、ういろうの上に小豆を乗せた「水無月」という和菓子を食べて無病息災を祈願したり、愛知県では、昔、不老長寿の果物と信じられていた無花果(いちじく)を田楽にして食べたりという風習が現代でも残っている。

 また、近年は夏至の日にちなんだ新しい催事も各地で始まったりもしているようだ。

 例えば、その一つが、2003年にスタートした「100万人のキャンドルナイト」だ。「100万人のキャンドルナイト」は「でんきを消して、スローな夜を。」を合言葉に、夏至と冬至の20時から22時までの2時間、電気を消してキャンドルの灯りの下で、思い思いに過ごそうというイベントだ。メイン会場となる東京の増上寺では、無数のキャンドルに灯火され、幻想的な夜が楽しめる。これに合わせて東京タワーも消灯される。開催22年目を迎える今年は、来場者のメッセージを綴った「メッセージキャンドルツリー」も新たに用意されたという。

 また、このキャンドルナイト運動に賛同して、養蜂業者大手の山田養蜂場では、夏至の夜の2時間、全ての電気を消して自然に負荷を掛けず、地球環境の回復と世界の平和を願う時間にしようと呼び掛ける「ミツロウキャンドルナイト」を開催した。これまでにミツロウキャンドルナイトに参加した人たちからは、同社宛に「子供が眠りについた後、キャンドルを灯して夜を過ごしました。世界中の子供たちが安心して眠れる、平和な世界を願っています。」

 「同居の義母とロウソクの灯りの下で、義母の子供の頃のことなど、普段聞くことができない話ができました。ロウソクの灯りが思い出させたのかもしれません。」「キャンドルの優しい灯りの中で過ごす夜が、こんなに心を穏やかにしてくれるなんて知りませんでした。時間に追われる日々ですが、久しぶりにゆっくり過ごせました。」など、メッセージが届いているという。

 キャンドルナイトは毎年夏至と冬至に行っており、次回は12月21日の冬至の日を予定している。温かなキャンドルの灯りの中で、大切な人と共に優しい時間を過ごしてみてはいかがだろうか。(編集担当:今井慎太郎)

6月21日は、一年のうちで最も太陽が出ている時間が長くなる「夏至」の日だった

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