【J2「鬼門」】仙台、またも勝ちきれず「みちのくダービー」ドロー J1昇格へ“複数選手が得点源になるチーム”への進化期待(2)

ここまで7得点、仙台の攻撃を牽引する中島元彦  撮影/中地拓也

■みちのくダービーはPKで点を取り合い…

またしても、勝ち切れなかった。

J2リーグ第21節が6月22、23日に行なわれ、22日、5位のベガルタ仙台は14位のモンテディオ山形との“みちのくダービー”に臨んだ。19節のヴァンフォーレ甲府戦、20節のV・ファーレン長崎戦がドローに終わっている仙台は、3試合ぶりの勝利が求められている。

いつもどおりの4-4-2で山形と対峙する仙台は、中央をしっかりと締めていく。その結果として左サイドからFWイサカ・ゼインに持ち出される場面があったが、決定的なシュートは許さない。

試合が動いたのは32分だった。GKから始めた相手のビルドアップを高い位置で引っ掛け、ペナルティエリア内右へ運んだオナイウ情滋のクロスが、相手DFのハンドを誘う。PKである。FW中島元彦が落ち着いて決め、仙台は先制した。

しかし、リードは長く続かない。40分、相手FKのクリアが短くなり、MF南秀仁にゴール正面からシュートされる。これがCB小出悠太の右手に当たる。身体に手を付けているようにも見えたが、判定はハンドだった。これを古巣対戦となるFW氣田亮真に決められ、同点に追いつかれてしまった。

■2点目を取るチャンスはあったが

後半戦に突入したJ2リーグは、清水エスパルス、横浜FC、長崎が三つ巴となって争っている。前節終了時点で勝点を「40」台に乗せているこの3チームが、現時点で一歩抜け出していると言っていい。前節終了時点で勝点「34」の仙台としては、アウェイでも勝点3がほしい状況である。

2点目を取るチャンスはあった。58分、MF相良竜之介が自陣左サイドからドリブルで持ち込み、ペナルティエリア手前で右足を振り抜く。コースを狙ったコントロールショットが、右ポストをかすめるようにそれていった。

78分、相手のビルドアップを規制して敵陣でボールを奪い、中島がパスを受ける。ペナルティエリア左角付近から、DFラインとGKの間へグラウンダーのパスを通す。途中出場のFW中山仁斗が、CBの背中を取っている。フリーだ。あとはゴール内へプッシュするだけだったが、利き足ではない右足のシュートは枠をとらえることができなかった。

試合後の森山佳郎監督は、「勝点3を取れなかったのは、僕らからすると非常に悔しいですけれど、引分けが妥当な試合だったかなとも思います」と振り返った。

過去のJ1昇格チームには、得点について2つの傾向がある。絶対的な得点源を頼りに勝点を稼ぐチームと、複数の選手が得点源になるチームがあるのだ。

前者は21年のジュビロ磐田と京都サンガF.C.、22年の横浜FCなどである。磐田はルキアン、京都はピーター・ウタカ、横浜は小川航基がゴールを量産した。

後者は20年のアビスパ福岡、22年のアルビレックス新潟、23年の磐田などである。

福岡は遠野大弥(11点)、フアンマ・デルガド(8点)が得点源となった。新潟は谷口海斗、伊藤涼太郎、高木善朗が9得点をあげ、鈴木孝司が8得点を記録した。23年の磐田では松本昌也、ジャーメイン・良、ドゥドウが9ゴール、上原力也が8ゴール、後藤啓介が7ゴールを決めている。

今シーズンの仙台は、後者に属するだろう。ここまで中島が7点、相良が5点、中山が4点だ。彼ら3人に加えてMF郷家友太やオナイウが数字を伸ばすことで、山形戦のような試合を引分けではなく勝ちに変えることができるはずだ。

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