旬のサクランボがボコボコに… 「カメムシ注意報」発表の広島県内で、“においだけじゃない”被害深刻

独特のにおいを放ち厄介者扱いされるカメムシが大量発生。5月23日、広島県内全域に「カメムシ注意報」が発表された。越冬した個体数は例年の2.8倍とみられ、“におい”だけでない悩ましい被害が起きている。

ストロー状の口で果汁吸う厄介者

標高500メートルの山あいに位置する広島・三次市の平田観光農園。春はイチゴ、夏にはサクランボやモモ、秋にかけてはナシ、ブドウ、リンゴなど一年中、果物狩りを体験できる。

6月は日差しをたっぷりと浴びた甘いサクランボが世代を問わず大人気。収穫したサクランボをほお張る子どもは「おいしかった」と満足そうな笑顔を見せた。

しかし、そのサクランボに2024年は異変が起きている。よく見ると、たわわに実った色鮮やかなサクランボの中に、空気の抜けたボールのようにボコボコとへこんだ実がある。

しぼんでしまった“いびつな形”のサクランボ。畑に飛んできたカメムシがストロー状の口で中身を吸ってしまったせいだ。被害は全体の1割ほどで、ところどころに商品として提供できないものが混じっている。

平田観光農園の平田真一社長は「上からは鳥がやってくるし、下からはイノシシやシカ、カメムシがやってくるし…。大変でございます。あいつら、食べちゃいけないのが分からないからね」と苦笑いした。

「侵入防止」が一番のカメムシ対策

平田社長は「冬場から例年の何倍かのカメムシが目で見て分かる状態でした。この調子だと夏に向けてまだまだ気の抜けない状況が続きます」と頭を悩ませている。

カメムシの大量発生を受けて、平田観光農園では例年より1週間早い5月末にカメムシの侵入を防ぐためのビニール製の屋根と壁面を覆うネットを張った。それでもカメムシは夜間を中心にわずかなすき間から入り込む。ひとたび吸われると、サクランボは元の形には戻らない。

サクランボをはじめモモやナシなど、果樹全般に群がるカメムシ。冬場の気温が全国的に高かった影響で、広島県内では過去10年平均の2.8倍の個体数が「越冬」したとみられ、2024年5月、2年ぶりに注意報が発表された。

害虫駆除のプロは、巣を作って生活するハチやシロアリ以上に根本的な解決が難しいと指摘する。広島県薬業の手塚孝志さんは「カメムシの場合は巣が特定できません。あらゆるところが発生源になっていますので、根本的に駆除するのは非常に難しい。カメムシは2ミリくらいのすき間があると入ってきてしまう危険性があります。入らないようにするという対策しかない」と話す。“いかに侵入を防ぐか”が一番のカメムシ対策になりそうだ。

「におい」だけではないカメムシの被害。県西部農業技術指導所によると、産卵期の7~8月にかけて個体数のピークを迎えるという。

(テレビ新広島)

© FNNプライムオンライン