この夏、海風爽やかな四国・愛媛へ。道後温泉に観光列車、4年に一度の逆打ちなど見どころ満載!

鉄道写真家・村上悠太イチ押し! しまなみ海道から入り、瀬戸大橋から帰るおすすめコース

6月に入り、そろそろ夏の旅程を考えている方もきっといらっしゃると思いますが、潮風香る、海風景あふれる四国の夏旅はいかがでしょうか?

今回、僕がお勧めしたいのは愛媛エリア。まもなく全館営業再開する道後温泉本館をはじめ、一度は乗りたい、いやむしろ何度も乗りたい大人気観光列車「伊予灘ものがたり」など、その魅力は盛りだくさん! 今回はちょっと変わったスポットもご紹介していきます。

独特の潮流を間近で!「来島海峡急流観潮船」

四国へのアプローチといえば、岡山駅から瀬戸大橋線で…というのが定番パターンですが、今回はもう少し足を延ばして、「しまなみ海道」経由で四国を目指します。「しまなみ海道」はサイクリングの聖地でもあり、オンシーズンには海峡に架かる橋から眺める絶景を楽しみながら、多くのサイクリストが行きかいます。


来島海峡にかかる来島海峡大橋。多くの船が行き交う瀬戸内海の要所でもある

そんな「しまなみ海道」の南側、来島では来島海峡の急流を目の前で見学できる、「来島急流観潮船」が出港しています。


文字通り急潮流を体感できる「来島海峡急流観潮船」

海底から込み上げる潮流により複雑にうねる海面

来島海峡はその独特の海底地形や狭小な海域から、最大で10ノット(時速約18キロ!)もの急流が流れ、日本三大急潮流に数えられています。
観潮船では、その潮流の激しいところの目前まで接近し、時にはエンジンを止めて、潮流に流される体験をさせてくれることも!
周辺には造船所も多く、ガイドさんが船の構造なども解説してくれるなど、軽快な案内も楽しめます。来島海峡大橋の真下をくぐるのはこの船ならでは。
航行中は風が心地よく、夏でも快適な涼スポットでもあります。


伊予灘を眺めながら特別な午後を「伊予灘ものがたり」


下灘駅に停車中の「伊予灘ものがたり」

愛媛に来たなら絶対に乗りたいのがこれ!2014年に運行開始以来、温かな地域の歓迎やアテンダントさんのサービス、こだわりの飲食メニュー、そして伊予灘の絶景が人気を博し、ついに今年、通算乗車人数20万人を達成したJR四国の「伊予灘ものがたり」。
走行する時間帯に合わせて4つのコースがありますが、今回のように他の旅程に組み込むのであれば、朝に松山を発ち伊予大洲に向かう「大洲編」と、夕方に八幡浜から松山に向かう「道後編」が便利。一方で、車内でランチをしっかり食べたい! という方は、日中時間帯に走る「双海編」・「八幡浜編」がおすすめです。


乗車時にはアテンダントさんが笑顔で出迎えてくれる

国内最大級の室内面積を持つ“フィオーレスイート”「陽華の章」(最大8名定員)

今回、乗車したのは八幡浜発松山行きの「道後編」。事前予約で楽しめる食事メニューは「アフタヌーンティー」が用意されています。「伊予灘の菓織箱」と名付けられたこちらのメニューは、オリジナルの砥部焼の容器に盛り付けられ、見た目も味も絶品そのもの。そして、八幡浜を出発した乗客を待ち受けるのは、沿線の皆さんによる惜しみない歓迎です!

家の二階や公園、広場、野球の試合中の少年など、とにかく本当に多くの方々が単に手を振るだけでなく、工夫を凝らして、みなさんを歓迎してくれます。その熱意はうっかりしていると食事をするのを忘れてしまうほど。この歓迎に感動し、リピーターになってしまう方が多いのもきっとうなずけるはずです。


サンドイッチやスコーン スイーツが入るアフタヌーンティーメニュー(事前予約制)

沿線の至る所で列車を歓迎してくれるのでこちらも思いっきり手を振って応えよう

そして道後編だけのとっておきが、伊予灘に沈む夕日。季節にもよりますが、午後遅めに運行される「道後編」では、ちょうど海沿いを走る区間で夕日が眺められることも。絶景&温かなひとときにあふれる、素敵な感動列車なのです!



伊予灘に夕陽が沈んでゆく

道後温泉なのに温泉がない! 「ホテル道後やや」

「伊予灘ものがたり」で心がポカポカになったら、今度は温泉で身体もポカポカになりに行きましょう!
松山駅から道後温泉の中心地までは路面電車が便利。駅前から道後温泉までは約30分ほどです。

僕は道後温泉が大好きで、温泉街の散策や名所でもある外湯めぐりなどを楽しみたいのですが、ここで1つ問題がありまして…。それが「旅館に温泉があるとなかなか外出しづらい」という点。旅館の温泉もゆっくりしっかり楽しもうとすると、意外に外出するのがおっくうになってしまい、結局散策しなくて、ちょっぴりもったいない気持ちになることもしばしば。

そんな中、少しユニークなのがJR四国グループが手掛ける「ホテル道後やや」というお宿。


温泉街の宿に必須の“アレ”がない「ホテル道後やや」

旅館風の佇まいと機能性に優れる客室が揃う

なんとこちら、道後にあるのに館内に「温泉」がないんです!
もちろんシャワーはあるのですが、温泉については、すぐ近くにある飛鳥乃湯泉や椿の湯、そして道後温泉本館などに行くスタイルになっています。そう聞くと一見「ビジネスホテル?」と思うかもしれませんが、各フロアは靴を脱いで上がる構造で設えも相まって“旅館感”があるほか、フロントにはバラエティー豊富なタオルバーが! そしてなにより、愛媛名物みかんジュースの蛇口も完備しています。


外湯めぐりに嬉しいタオルバー

異なる3種類のみかんジュースが楽しめる「みかん蛇口」

温泉街散策も楽しみつつ、しっかりと道後での宿泊を満喫できる、新しいスタイルのお宿です。


さあ、飛鳥乃湯泉などに繰り出して、外湯めぐりを満喫しましょう!


「ホテル道後やや」からもすぐの道後温泉別館 飛鳥乃湯泉。2階大広間では本館同様にお茶・お茶菓子・浴衣のサービスが受けられる

休憩室付きの特別浴室は本館の皇室専用浴室「又新殿」を再現


工事用の囲いが取れ、商店街からも再びその姿が見られるようになった「道後温泉本館」。全館営業再開は2024年7月11日


今年は4年に一度の逆打ち お遍路体験

うるう年の今年はお遍路さんにとって非常に大事な年。お遍路といえば通常、徳島県第1番霊山寺から順に巡る順打ちが普通ですが、うるう年には逆に香川県第88番・大窪寺から逆に巡る逆打ちが行われます。逆打ちの年は特にご利益が高いともいわれ、とても大切な年なのです。
本来であればすべてを巡るのが大切ですが、今回は道後温泉からほど近い、第51番札所の石手寺を参拝しましょう。


第51番札所の石手寺。健康と子宝・安産にご利益のあるお寺

ちなみにガイドさんに案内していただきお遍路さんの姿で石手寺をお参りすることができる「石手寺お遍路体験」も開催されています。詳しくは「松山はいく」のWebサイトをチェックしてみてください。



「松山はいく」で予約すればお遍路さんになりきれる

お参りのあとは「鯛めし」を楽しみたい

参拝のあとにいただきたいのが、松山市内の至る所で食べられる名物の「鯛めし」。
上の写真は鯛の刺身に卵を溶いたタレをつけて食べる宇和島式で、炊き込みタイプの松山式もあり、どちらも松山市内で楽しめますよ。

本州に戻る前にちょっと寄り道「TAKAMATSU ORNE」

さて、愛媛をしっかり満喫したらそろそろ帰路につきましょう。
せっかくなら来た道と違うルートで帰りたいのが僕の心情ですので、帰りは「しまなみ海道」ではなく、やっぱり瀬戸大橋で四国をあとにしたいと思います。
松山から岡山までは特急「しおかぜ」で直通できますが、ここでもう一捻り。「しおかぜ」に併結して走る、高松行きの特急「いしづち」に乗って、ちょっと高松に寄ってみましょう。
この時やってきたのは、ラッキーなことに8000系アンパンマン列車! 子どもはもちろん、出張中の方も思わず記念写真を撮ってしまう、大人気列車です!

「いしづち」101・9・21・10・22・104号、「しおかぜ」9・21・10・22号で運行されている8000系アンパンマン列車
©やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV

なぜ高松に向かったのかといいますと、今春高松駅に新しい駅ビル「TAKAMATSU ORNE」がオープンしたからです!
観光客向けだけでなく、地元の方にもうれしいお店が多く、特に1F奥の「shikoku meguru marche」は、四国中のありとあらゆる食材が集まった、必見のお店。地元まで行かないと買えない、かなり“通” なものまで取り揃えてあるのがおすすめポイントです。



定番のお土産から地産品まで揃う「TAKAMATSU ORNE」

開業以来通算利用者数が3億人を超えた瀬戸大橋線を走る快速「マリンライナー」(岡山行は1号車が最後尾になります)

本州へは快速「マリンライナー」で。1号車の2階グリーン車・1階指定席はJR西日本のインターネット予約サービス「e5489」で予約すると、かなりお得に利用できるのでおすすめです。ただ、最近では満席になることも多いので乗る列車が決まったらすぐに手配しておくと安心です。

夏の四国はひときわ色鮮やかに輝く海と緑が魅力! そして道後温泉本館の再開など見どころも満載です。



著者紹介

村上悠太

1987年鉄道発祥の地新橋生まれ、JRと同い年の鉄道写真家。
交通新聞社刊『鉄道ダイヤ情報』では「ユータアニキ」としてあらゆる現場で鉄道を支える「鉄道HERO」たちの取材を続ける。元々旅好きから写真を始めたので、乗り物に乗って旅をしながら写真を撮るのが大好き。

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Instagram:https://www.instagram.com/yuta_murakami/

  • ※取材・撮影・文=村上悠太
  • ※掲載されているデータは2024年6月現在のものです。

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