麺類をすするのはマナー違反の国で日本人女性が従来のスタイルを貫く理由 イギリス人に聞いた本音とは

すすって食べるとおいしい麺類。欧州ではどう食べるべき?(写真はイメージ)【写真:Getty Images】

暑さで食欲がなくても胃袋に優しいそうめんやうどんなど、夏になるとずずーっと食べたくなる麺類。ですが、麺をすするときの音を不快に感じる人もおり、「ヌードルハラスメント」という言葉があります。欧米などではとくに慎んだ方がいいという意見も聞きますが、実際のところどうなのでしょうか。ひょんなことから英国に移住、就職し、海外在住歴7年を超えたMoyoさんが、外国暮らしのリアルを綴るこの連載。33回目は、英国やフランスで実際に暮らして感じたマナーの違いを紹介します。

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ラーメンやうどんの人気ぶり

すする音に対する認識は、日本と欧州では異なります。前回は鼻をすする行為について取り上げましたが、今回はさらによく気になる麺をすする音を取り上げたいと思います。ロンドンには日本から進出してきている日本食のチェーン店やテイクアウトショップが多数あります。さらに、ロンドンで生まれたローカルな日本食のお店もたくさんあります。

そうしたお店が取り扱っているのは、お寿司だけではなく、ラーメンやそば、うどんなど多岐にわたります。日本でおなじみのメニューの知名度や、人気ぶりはロンドンで揺るぎないものとなっています。

チェーン店でいえば「一風堂」、「金田家」などのラーメン店は、ロンドン中心地であるシティセンターに行けば必ず見かけるほどの店舗数があります。2021年にうどんの「丸亀製麺」が進出したときは、とても長い行列ができるほど。個人的にも「待ってました!」と大盛り上がりでした。

今住んでいるフランスでもお寿司はもちろんのこと、ラーメンや麺類はやはり人気の様子。さすがにここにはないだろう、と思う小・中規模な地方都市でもラーメン屋さんを見かけることもあり、味はさておき、そのアクセスのしやすさにありがたみを感じるほどです。

ロンドンで大盛況の丸亀製麺【写真:Moyo】

麺をすする音は恥ずかしい?

そんなわけで、日本人の友人とはもちろん、日本食が好きだったり興味があったりするこちらの友人や同僚とも、ラーメンなどの麺類を食べに行く機会が多くあります。そこで気になるのが、いや、気にしなければならないのは、やはり音。

欧州人は麺をすすらない、というのは以前見聞きしたことがあったので、頭の片隅でどこか覚悟はありました。ですが、やはりそんなことはいっても、都市伝説なのでは? と思う自分も。

いざフタを開けてみると、本当に音を立てません。そんななかにいると、私も最初は音を立てないように神経を使っていました。

しかし、変に食べ方に気を遣ってしまって時間がかかるようになり、おいしい麺が冷めていってしまうことに気づいたのです。そしてだんだんと親しい人々には、日本の食べ方は音を立てるものなのだと説明し、従来のスタイルをほどほど貫くことに。

実際「この音気になるもの?」と聞いてみると、「最初は確かに驚いたけど、そういうものなんだと思えばとくに」という返事。ちなみに日本食に慣れている友人は自ら音を立てている人もいます。

けれども大半の欧州人は、少しずつ、ちびちびと上品に食べるのが印象的。麺を豪快にすすらない分、箸の進みが遅いのは致し方ないかもしれません。また、箸の使い方に慣れていないというのも理由でしょう。さらに、猫舌の人が多いというのも大きな違いに挙げられます。

麺類はとくに熱いうちに、麺が伸びてスープを吸わないうちにガーっと食べるのがおいしい! という認識がそもそもないんだなと新たに気づくことになりました。そんなわけで、私がほぼ食べ終わりかけているのに対して、相手はまだ半分くらいしか進んでいない、なんてことがざらにありました。そして、麺がスープを全部吸ってしまい、無惨にも? まったく違う姿になっていたことも。

こんな事情もあり、日本人同士はもちろん、韓国人や台湾人などアジア系の友人と食事するときは、やはり伺いを立てるハードルも低く、スピード感も一緒で、食に関しては気を遣いすぎることなく楽だなぁと思ったものです。

Moyo(モヨ)
新卒採用で日本の出版社に入社するも、心身ともに疲弊し20代後半にノープランで退職。それまでの海外経験は数度の旅行程度だったが、イギリスへ語学留学ののち移住した。そのまま、あれよあれよと7年の月日が経ち、現在はフランスに在住。ライター、エディター、翻訳家、コンサルタントとして活動している。最近ようやくチーズのおいしさに少し目覚める。

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