『虎に翼』寅子から溢れ出た「梅子さーーーん!」 大庭家の危うい実態が明らかに

元山すみれ(武田梨奈)から裁判の相談を受け、思いがけずかつての同窓である梅子(平岩紙)と再会を果たした寅子(伊藤沙莉)。『虎に翼』(NHK総合)第62話では、すみれが持つ遺言書の検認をするために、寅子が奮闘する。

香淑/香子(ハ・ヨンス)とよね(土居志央梨)に続いて梅子と再会した寅子だが、その出会いは喜ばしいものではなかった。遺言の存在と内容を行う“検認”の場に同席した梅子は寅子とは目も合わせようとしない。大庭家における立場を考えると、事情があることは察することはできる。検認が終わると、寅子がいる部屋を再度訪れた梅子が「さっきはごめんなさいね」と謝罪。その温かい表情は明律大学女子部で切磋琢磨した梅子そのもの。寅子は「梅子さーーーん!」と叫び、久しぶりの再会を喜ぶのだった。

喜びもつかの間、寅子は梅子を轟(戸塚純貴)とよねの事務所へと案内する。2人との再会を喜ぶ梅子だが、誰よりも喜びを爆発させていたのは轟だ。つくづく情に厚い男だと思う。気になるのは、なぜ一度は逃げ出した大庭家に再びいるのかということ。

梅子は寅子たちと明律大学女子部に入学し法律を学んでいたが、夫である大庭徹男(飯田基祐)に「息子たちにはもう会えないと思え」と離婚届を突きつけられ、三男の光三郎を連れて家を出ていたはずだ。しかし、10日も立たないうちに見つかってしまい、連れ戻されてしまっていた。そのタイミングで梅子は徹男が倒れたことを知り、身体に麻痺が残ってしまった徹男を介抱するために戻ることに決めたのだった。もちろん、光三郎のそばにいてもいいという条件で。

轟とよねがいつものように口喧嘩を始めたのを見ていた梅子が、「懐かしいわ。戻ったみたい。私の人生が一番輝いていたあの頃に……」と過去に思いを馳せる。だが、梅子には過去を振り返ることなく、今が一番輝いていると言ってほしい。

一方で、家庭裁判所の仕事へと戻った寅子は、広報活動の一環として開催しようとしている「愛のコンサート」をどう成功させるかにも悩まされていた。多岐川(滝藤賢一)は「東京ブギウギ」の1節を口ずさみ、寅子は“福来スズ子”の名前を口に出す。寅子は「来てくれるわけない」と言っていたが、『ブギウギ』とのコラボが実現する可能性はあるのだろうか。

梅子の1件を担当することになった轟とよね。すみれが持ってきた遺言に書かれていた証人の住所が実在しないことが発覚。当然その場合には遺言書は無効であり、さらにはすみれが有印私文書偽造罪に問われる可能性がある。

すみれは「なんだ、もうバレちゃったか」と罪を認めたことで法律上の相続人だけになったわけだが、梅子の「これからよ」という言葉の意味を知ることになる。長男の徹太(見津賢)は「相続を放棄しろ。大庭家は俺が守っていく」と話すが、次男の徹次(堀家一希)はそれに反発。「母さんだけ(相続を)放棄すればいい!」と話す徹次に、梅子は放棄しないときっぱり宣言する。果たして誰もが納得する帰着点を迎えられるのか。
(文=川崎龍也)

© 株式会社blueprint