ソニーなど大手3社、音楽生成AIのUdioとSunoを提訴。著作権曲での訓練禁止や損害賠償請求

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音楽大手のユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG)、ソニー・ミュージック、ワーナー・レコードの3社は、音楽生成AI企業のUdioとSunoを米連邦裁判所に提訴したと報じられている。

今回の訴状は、両社は人間アーティストの作品と「直接競合し、安っぽくし、最終的にはかき消すような」音楽生成AIモデルを訓練するため、無断で楽曲をコピーし、大量の著作権侵害をしたと主張。さらに著作権保護された楽曲での訓練を禁じる差止命令と、すでに起こった侵害行為に対する損害賠償の両方を求めている。

UdioとSunoともテキストベースの説明に基づき、楽曲を生成できるサービスだ。多くの競合他社がインストゥルメンタルか歌詞、ボーカルのみを生成できるに過ぎないのに対し、これらは3つ全てを同時に生成できる。音質も高く、歌声もバックの演奏も非常に自然で人間のようである。

両社とも、明らかに人間が作成した既存の楽曲からなる膨大なデータに依存しており、単語と音楽スタイルの関連を生成AIモデルに教えているはず。が、ともに訓練に使った素材につき曖昧にしたままだ。音楽レーベル側の訴状でも、学習データの出所につき「意図的に(言及を)避けて」いると指摘している。

数年前までは、機械学習では著作権で保護された情報を、許可を得ずにスクレイピングして使うことが一般的だった。しかし、最近では生成AIサービスが利益を上げるビジネスになったことから、権利者が取り立てに来るようになった。米New York Timesも、マイクロソフトとOpenAIに対して損害賠償を請求する訴訟を起こしていた。

今回の訴訟でも、音楽レーベル側は訓練に使われた曲1つにつき最高15万ドルの損害賠償を求めている。Sunoが662曲を、Udioが1670曲を無断コピーしたとのことだ。

具体例としては、テンプテーションズの「My Girl」、マライア・キャリーの 「All I Want for Christmas Is You」、ジェームス・ブラウンの「「I Got You (I Feel Good)」などの曲の要素が再現できたとのこと。またマイケル・ジャクソンやブルース・スプリングスティーンと「区別が付かない」ボーカルも生成できたという。

Reutersは「音楽生成AI相手に初訴訟」としているが、これに先立ち音楽会社は動きを起こしていた。

たとえばUMGは昨年末、生成AIモデルClaudeの訓練データにアーティストの歌詞が含まれているとして、Anthropicに対して著作権侵害訴訟を起こした。またソニー・ミュージックも先月、700以上のAI企業と音楽ストリーミング・サービスに対して、自社の楽曲をAIの訓練に使うことを禁じる警告を送ったばかりだ

こうしたAIスタートアップへの莫大な請求は、ビジネスモデルの根底を覆す可能性がある。その一方で、権利を持つ大手レーベル自らが独自の生成AIサービスを提供する展開もあり得そうだ。

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