高校生いじめ自殺から10年 鹿児島県と遺族が和解 母親「二度と苦しむ子が出ないように」涙ながらに再発防止訴える

県立高校の男子生徒が2014年に自殺したことうけ、生徒の母親が「いじめが原因だった」などとして、鹿児島県に損害賠償を求めている裁判について、25日、母親と県が和解しました。「いじめで苦しんだり亡くなることは二度と繰り返してほしくない」と語りました。

(拓海さんの母親)「本当に10年必要だったのかな。10年前に(県から)説明を聞けていれば、もう少し安らかな10年を迎えられたとすごく思う」

この問題は2014年8月、高校1年の拓海さん(当時15)が自殺したものです。2017年、県教育委員会の第三者委員会は「いじめがあったとは断定できない」とする報告書をまとめました。

そして2018年、遺族の要請を受け設置された県の再調査委員会は、中間報告で一転して「いじめがあった」とする判断を示し、2019年には「いじめが自殺に大きな影響を与えた」とする報告書をまとめていました。

県教育委員会は、拓海さんの自殺を未然に防げなかったことに対し、遺族に直接謝罪したものの、2021年に拓海さんの母親は「いじめを防止し、自殺を回避すべき義務を怠った」などとして、県におよそ4500万円の損害賠償を求めていました。

鹿児島地裁は今年3月、和解を勧告。拓海さんが亡くなってからおよそ10年経った25日、県と拓海さんの母親はこの内容を受け入れ、和解しました。

拓海さんの母親側は損害賠償の請求を放棄し、和解の条件として、「県が重大な事態を防げなかったことを拓海さんの母親に謝罪すること」や「公立学校を対象としたいじめ防止のための対策の継続」など、7つの条件が盛り込まれました。

拓海さんの母親は25日に会見を開き、学校でのいじめをなくすために、県には、子どもや保護者ら当事者の声を取り入れて再発防止策を徹底してほしいと訴えました。

(拓海さんの母親)「戦うのはやめてもいいんじゃないか、ここが終着点なのかなと和解を受け入れた。残してあげられるものは何かと考えたときに、真に次(の被害者)を出さないために拓海がしたことを残してあげたい。
二度と繰り返してほしくない。二度と亡くなる子も苦しむような子どもになってほしくない。それが一番」

和解を受けて、県教委の地頭所恵教育長は「かけがえのない命が失われるという重大な事態が防げなかったことについて、生徒とご家族に改めて謝罪いたします。いじめ防止のための対策をより一層推進し再発防止に努めます」とコメントしています。



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