バスの運転手不足が深刻化…北陸中日新聞・奥田記者の解説

バス運転手不足について、北陸中日新聞の奥田哲平記者に聞いた。

最近のバス情勢です。北陸新幹線の敦賀延伸開業で、北陸から名古屋に行く交通手段が、鉄道から高速バスにシフトしているようです。延伸によって敦賀駅や米原駅での乗り換えが生じることになりました。乗り換えの不便がなくて、かつ安価な高速バスを選ぶ人たちが増えています。

金沢-名古屋間の場合、北陸新幹線から敦賀駅で「しらさぎ」に、米原駅で東海道新幹線に乗り継ぐと所要時間は2時間9分で料金は1万380円。一方、高速バスは約4時間で3600~5500円です。金沢、富山、福井の各駅前と名古屋を結ぶ高速バス3路線は、4月の金沢-名古屋線は前年同月比で1.6倍、福井-名古屋線も1.6倍、富山-名古屋線が1.1倍となっています。

北陸鉄道と富山地方鉄道は7月1日から金沢-名古屋間、富山-名古屋間を結ぶ高速バスをそれぞれ減便します。北鉄は1日11往復している名古屋線を10往復に減便、富山は名古屋線を14往復から10往復に減らします。既にコロナ禍の影響で2022年7月から4往復を運休としていたが、正式に減らしました。

その原因が運転手不足です。バス運転手は近年、高齢化などを理由に全国的に不足傾向にありますが、ここに2024年問題への対応を迫られました。4月から運転手の時間外労働時間の上限が見直されたのです。

北陸鉄道は3月のダイヤ改正で、金沢近郊の路線バスを中心に最終便の繰り上げや減便を実施しました。去年4月から今年5月までに計画通り21人を採用したものの、それを上回る25人が退職したといいます。金沢地区の運転手の充足率は過去10年間にわたって100%に達しない状況が続いており、5月15日時点で92%です。

運転手確保のため、職場見学会やバスの運転体験会の開催、4月には給与引き上げなどの待遇改善も図っていますが、綱渡りの状況が続いています。

高速バス名古屋線の減便について、北鉄の担当者は「生活路線の維持を優先せざるを得ない」と話しています。以前、私が取材した旅行会社も、金沢へのツアーバスや観光貸切バスの需要があっても、運転手が確保できないと悩んでいました。問題は、観光業にも影響しそうなんです。

これは全国的な課題です。日本バス協会の試算では、2030年度に36000人の運転手が不足します。これに対し、政府は外国人労働者の在留資格「特定技能」の対象にバスなどの自動車運送業を追加する方針です。

バス以外のトラック業界でも運転手不足は深刻で、奪い合いの状況になっています。まずは運転手の処遇改善や大型2種免許の取得支援、女性運転手の採用を増やす必要があります。バスは鉄道とともに、地域の足を守る大切な存在です。行政が財政支援を含めて積極的に関わっていくことが求められています。

© 石川テレビ