〈鹿児島県知事選7月7日投開票〉土砂災害、桜島噴火、南海トラフ…命と直結する県の防災対策 有権者は何を望む?

大雨による落石で通行止めが続く県道鹿屋吾平佐多線=南大隅町根占

 7月7日投開票の鹿児島県知事選は、梅雨真っただ中の選挙戦となっている。県内各地で警報級の大雨が降り、土砂災害の危険度が上昇。大規模噴火の恐れがある桜島を抱え、南海トラフ巨大地震への備えも欠かせない。災害の多い鹿児島県のリーダーには防災、減災のかじ取りも求められる。

 「県道の通行止めで日常生活に支障が出ている」。南大隅町佐多辺塚の農業、熊之細康夫さん(69)は週1回、鹿屋市へ買い物などで出かけるが、同町と鹿屋市を結ぶ県道鹿屋吾平佐多線は5月30日以降、全面通行止めが続く。迂回(うかい)路を通らなければならず、「車の運転がおっくうになった。病院に通う高齢者はもっと不便な思いをしている」と地域の不満を代弁する。

 県大隅地域振興局によると、複数回の落石で石が道路を覆い、復旧のめどは立っていない。町内では昨夏の台風で土砂崩れが相次ぎ、今も復旧の途中。熊之細さんは「知事選では、体育館の建設など、都会の話ばかり聞こえてくるが、県道の復旧こそ早くやってほしい」と注文をつけた。

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 太平洋に面した志布志市は、南海トラフ地震が発生した場合、最大震度6強の揺れと最大津波高6.4メートルが想定される。志布志港や沿岸部に近い押切西地区には昨年、津波発生時の避難場所となる高さ8~9メートルの「築山」が築かれた。通山校区コミュニティ協議会の野村不二生会長(69)は「どうしても間に合わない時の避難場所。高台へ逃げるのがいちばん。避難路や避難所の整備を」と望む。

 白砂青松で知られた押切海岸は波に削られて浜崖ができ、矢板や消波ブロックで砂の流出を応急的に防ぐ状態が続いている。「津波対策も大事だが、台風や高潮による越水の危険が年々増している」と護岸整備の必要性を訴える。

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 6月中旬の鹿児島市議会では、桜島が大規模噴火した際の広域避難計画について「いつできるのか」と質問が相次いだ。同市の防災計画では、最大数十万人が市外へ避難する。受け入れ先の自治体の了解は得ているが、大正噴火級の大規模噴火になれば、他市の避難計画との調整も必要。関係自治体でつくる桜島火山防災協議会では、事務局の県が広域計画を策定することになっている。

 県危機管理課によると、広域避難は、降灰などで避難生活が困難な地域を対象に、火山活動が一定程度収まるまでの期間を想定する。自衛隊や国交省などいくつもの関係機関との調整が必要で、計画策定に時間を要している。

 防災活動に関わるNPO法人アユダールの村野剛代表理事(62)は「住民に直接関わる市町村の後方支援が大切。災害が起きてからでないと評価されない裏方の仕事だが、平時から防災、減災に取り組んでほしい」と調整役としての県の役割に期待した。

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