【社説】ロ朝の軍事同盟 アジアの緊張拡大を懸念

ロシアと北朝鮮が事実上の軍事同盟を結んだ。北東アジアの安全保障環境への影響は避けられない。日本は米国、韓国などと緊密に連携して対応する必要がある。

ロシアのプーチン大統領が24年ぶりに北朝鮮を訪問し、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記と会談した。

2人が署名した「包括的戦略パートナーシップ条約」には、両国のどちらかが武力侵攻を受けた際は「遅滞なく、保有するあらゆる手段で軍事的およびその他の援助を提供する」と記された。

旧ソ連時代の1961年に結ばれ、ソ連崩壊後に失効した軍事同盟の復活と言える。

ロシアがウクライナに侵攻してから、ロ朝は急接近している。首脳会談は昨年9月にも行われた。今回締結した条約には安全保障、政治、経済など幅広い分野の協力拡大が含まれている。

新条約の締結で懸念される事態の一つは、ロシアが極秘に進めているとみられる北朝鮮からのミサイルや砲弾の調達がさらに拡大することだ。ウクライナ侵攻がますます長期化する恐れがある。

プーチン氏が新条約に関して「北朝鮮との軍事技術協力を排除しない」と明言しているため、北朝鮮の核・ミサイル開発が加速することも想定される。

北朝鮮は見返りに、ロシアからミサイルや軍事偵察衛星の開発に関する技術のほか、大量の石油などの提供を受けているとされる。いずれも国連安全保障理事会の北朝鮮制裁決議に違反する行為だ。

プーチン氏は北朝鮮への制裁を「見直すべきだ」と主張する。制裁決議の履行状況を監視していた国連安保理の専門家パネルは、ロシアの拒否権発動によって今年4月で活動を終えた。

このような行動を続けるロシアは、国連主導のルールを加盟国に順守させる安保理常任理事国にふさわしくない。極めて強い非難に値する。

今後注視したいのは、ロシアと北朝鮮の双方と関係が深い中国の出方だ。

今のところは距離を置く姿勢を示している。両国に肩入れし過ぎて、米欧などから制裁を受ける事態を警戒しているようだ。

核開発をはじめ、北朝鮮の際限ない軍事力増強は朝鮮半島情勢を一層不安定にする。日本、韓国だけでなく、中国にとっても憂慮すべき事態だろう。

中国は政治、経済ともに北朝鮮に強い影響力を持つ。ロ朝の関係強化が地域の緊張を高めないように、両国に自制を促す役割を積極的に果たしてもらいたい。

日米韓は両国の動きに強い姿勢で対処すると同時に、北朝鮮に「対話の道」へ戻るよう働きかけるべきだ。

国連は安保理常任理事国の足並みがそろわず、機能不全に陥っている。欧州各国やオーストラリアなどとの連携も欠かせない。

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