【コラム・天風録】ユニクロ40年と規制緩和

 衣料品店ユニクロの1号店が広島市中区に開いて40年を今月迎えた。この店はもうないが、今や世界に2400店を超すと聞けば、発祥の地として誇らしくもある▲長く経営トップを務める柳井正さんの言葉に驚いたことがある。十数年前の懇談の席で国に望む支援策を尋ねると、「何もない。放っておいてほしい」と返ってきた。寸暇を惜しんで事業を拡大する中、細かい規制への対応が煩わしかったのだろう▲規制改革は社会の長年の課題である。昨年度は、経済の活性化や暮らしの向上を目的に政府が掲げた115件の見直し項目のうち3割弱しか達成できなかった。医師に限られる診断や治療の一部を看護師も担えるようにすることなどが見送られた▲規制にはもともと理由があり、拙速な緩和や撤廃は危うい。一方で、世の中はどんどん国際化し、人の価値観も変わっていく。時代遅れの規制の見直しは欠かせない。経済界、特に新興企業は自由な環境を求めている▲40年前のユニクロはまだ新興企業。1号店の立地が目抜き通りから外れていたのはお金がなかったからだ。グローバル経済で日本の存在感は下がる一方。若い企業の活躍の場が広がる改革を、ぜひ。

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