低迷続く西武、敢行した電撃トレード “指揮官”が明かす真意「きっかけが必要だった」

入団会見を行った西武・松原聖弥(左)と渡辺久信GM兼監督代行【写真:宮脇広久】

松原も若林も1度は鮮烈な活躍をしてレギュラーに定着しかけた

松原聖弥外野手が西武、若林楽人外野手が巨人へ移籍する交換トレードが成立。両選手は25日、それぞれ移籍先で入団会見を行った。外野手同士の交換で、弱点を補い合うトレードではないように見える。西武の渡辺久信GM兼監督代行が、トレードの狙いに言及した。

松原と若林の共通点は、1度は鮮烈な活躍をして、レギュラーに定着しかけた経験があることだ。育成選手として巨人入りした松原は、俊足巧打を武器に、2年目の2018年7月に支配下登録を勝ち取った。翌2021年には規定打席をクリアし打率.274、12本塁打、37打点に15盗塁と大活躍。翌22年には、亀井善行外野守備兼走塁コーチが現役時代に付けていた背番号「9」を継承した。

しかし、その2022年から外国人選手の加入などで出場機会が激減。背番号9はわずか1年間で剥奪され、支配下登録当初の「59」に戻された。今季も開幕1軍に名を連ねたものの、打率.154(13打数2安打)、0本塁打2打点0盗塁と振るわず、4月15日以降は2軍暮らしが続いていた。松原は「一度は9番を付けさせてもらい、ジャイアンツでレギュラーを手にしかけただけに、そこからの2~3年は悔しかったです」と痛恨の思いを吐露する。

一方、若林も西武でルーキーイヤーの2021年、いきなりシーズン序盤に20盗塁を量産し、盗塁王争いで独走。チームの懸案だった「1番」に定着したかに見えた。ところが、同年5月30日・阪神戦の試合中に、左膝前十字靭帯損傷の重傷を負ってしまう。靭帯再建術を受け、翌22年に戦列復帰を果たしたものの、今も1年目の輝きは取り戻せていない。

「(このトレードは)選手のためでもあると言うか、きっかけが必要だったと思う」と渡辺監督代行は言う。「松原は何年か前に活躍した後、なかなか結果が出ず苦しんできたと思う。環境が変わったことをきっかけに、ガラリと変わった選手はこれまでにたくさんいた。トレードをきっかけに、もう1度レギュラーを取るつもりでやってほしいし、本人にも『もう一度、輝いている姿を見たい』と伝えました」と明かす。一方で「若林も非常にポテンシャルの高い選手であることは確かだけれど、ウチにはちょっとアジャストしていなかった。新天地で活躍してほしい」と説明した。

「石川慎吾さんが移籍先で活躍されているのを見てきた」

2022年オフに現役ドラフトが導入されたこともあって、移籍をきっかけにブレークする選手が増え、かつて“放出”というネガティブなイメージが拭えなかったトレードも、前向きにとらえられるようになってきた。チームが変わり、指導者が変わり、気持ちが変わることによって、想像を絶する変貌を見せる選手がいる。

実際、DeNAでプロ入りから6年間鳴かず飛ばずだった細川成也外野手は、現役ドラフトで中日に移籍した昨季、いきなり24本塁打を量産。今季も主に4番を任されている。ソフトバンクで5年間、1軍出場が1度もなかった水谷瞬外野手は、現役ドラフトで日本ハム入りした今季、セ・パ交流戦MVPを獲得するなど大ブレークを果たしている。こうした選手が新天地を与えられず、元のチームで埋まれたまま終わっていたとしたら、球界にとって大きな損失だっただろう。

松原も悔しさを抱えつつ、「ロッテに移籍した石川慎吾(外野手)さんが、ジャイアンツにいた時よりも活躍されているのを見てきたので、自分もまた気持ち新たに頑張れます」と移籍を前向きにとらえようとしている。

松原も若林も、この日は出場選手登録を見送られ、入団会見即1軍戦出場とはいかなかった。渡辺代行は「いつ1軍に呼ぶかは決まっていないけれど、『しっかり準備しておいてほしい』と伝えました」と明かす。両選手にとって移籍が飛躍のきっかとなり、“ウィンウィン”の結果になれば何よりだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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