がれき撤去進まず 福島県のいわき駅前繁華街火災1カ月 工事着手まで最短2、3カ月

がれきが残されたままの火災現場=25日、いわき市平字田町

 福島県いわき市のJRいわき駅前の繁華街で多数の建物が焼けた火災から26日で1カ月が経過した。現場にはがれきが残されたままで、周辺から撤去が進まない現状に懸念の声が上がる。建物の権利関係者が複数いて当事者の合意形成が追い付いていないのが一因で、被災者支援に当たる市は25日、工事着手に最短で2~3カ月かかるとの見通しを示した。

 火災は同市平字田町で5月26日に発生し、全焼した5棟を含む13棟が被災した。「うちにも生活があるし、できれば早く撤去してほしい」とこぼすのは被災したビルの男性オーナーだ。全焼は免れたが、外壁の一部や窓が焼けた。いまだに電気が使えず、「業者からがれきを撤去しないと工事できないと言われた」という。復旧のめどが立たずテナント2店舗からも退去すると伝えられた。「景観も問題で駅前のイメージが悪くなる。誰かが音頭を取って方向性をまとめないと進むものも進まないのでは」と話す。

 現場では複数の建物のがれきが入り乱れて積み重なり、市内の不動産業者は「こういう場合は建物の所有者間で協議し、撤去費用を分担するのが一般的だ」と指摘する。ただ、全焼した建物の関係者は「まだそこまで議論は進んでいない」とし、費用負担や撤去の見通しが立っていない現状を明かした。

 過去に同じような火災が起きた場所はどう対応したのか。北九州市のJR小倉駅前の「鳥町食道街」付近では、今年1月の火災で36店舗が焼けて大量のがれきが発生した。市や商工会議所、商店街の組合が連携して撤去費用を募るクラウドファンディング(CF)を行ったり、被災店舗関係者などでつくる復旧対策会議を立ち上げたりして積極的に支援した。地元商店街の梯輝元理事長(65)は「約4千万円の撤去費をCFで素早く賄えたのが大きい。合意形成は難しくなかった」と話す。

 市は関係部署やいわき商工会議所でつくる「いわき駅前火災対応タスクフォース」を設けて建物所有者へ個別に合意形成を働きかけているが、現状で権利関係者がまとまって議論する場は設けられていない。市によると、被災の程度が建物ごとに異なり、所有者の中でも「撤去」や「再利用」など意向に差がある他、北九州市の事例と違い多くが地元の経済団体や組合に所属していないため、一体的な動きが取りづらい事情があるという。

 25日に開かれたタスクフォースの第2回会議で、内田広之市長は「一部連絡が取れない建物オーナーもいて合意形成に時間がかかる。撤去工事着手まで最短でも2~3カ月はかかると思う」と述べた。

■焼損面積1224平方メートル 被災テナントは44店舗に

 いわき市消防本部は25日、同市平字田町で起きた火災で、被災した建物の焼損床面積は計1224平方メートルだったと発表した。被災したテナントも当初の37店舗から44店舗に増えた。

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