熱波師(6月24日)

 熱波師。サウナ愛好家の注目を集めている職人だ。100度近くに熱せられた空気をバスタオルやうちわで激しくあおぐ。梅雨の蒸し暑さを払いつつ、こちらは客の発汗と血行を一気に促し、締めの水風呂が心地良い▼その技を求めて遠路、ファンが押し寄せる施設もある。業界誌発行の全国名鑑には約300人が名を連ねる。バスタオルをあおぎ、水が入ったペットボトル10本のうち何本をテーブルから落としたかを競う。さらに最大風速、パフォーマンス性をおもてなし演舞などで争う。熱波をいかに我慢してもらうか。話術も重要な技量の一つだ▼愛好家に人気のサイトによると、県内のサウナは200カ所超。熱波師がいる施設はまだまだ少ない中、須賀川市の施設では「灼[しゃく]熱[ねつ]王子」や「烈風魔人」などの愛称を持つ4人が活躍している。それぞれ特色のある技を披露し、ファンを獲得した▼県県南地方振興局はサウナによる交流人口の拡大を目指し、魅力を発信するホームページを開設した。サウナブームは衰えを知らない。名手の力を借り、県南発の波を国内に広げたい。同じ熱波でも、来たる猛暑の盛りに元気回復に重宝されれば熱波師冥[みょう]利[り]に尽きる。<2024.6・24>

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