ドル、基軸通貨の立場揺るがず 「脱ドル化」は進展なし=報告書

Andrea Shalal

[ワシントン 25日 ロイター] - ドルは世界の基軸通貨としての地位を保っており、ユーロもBRICS諸国も、世界のドル依存度を減らすような影響をもたらしていない――。米シンクタンク、アトランティック・カウンシル傘下のジオエコノミック・センターがこうした報告書を公表した。

報告書によると、ドルは外貨準備、貿易決済、為替取引の面で引き続き支配的な存在で、主要準備通貨としての役割は中短期的に安泰とみられる。

ロシア、インド、中国、南アフリカなどを中心に構成するBRICSが、ドル以外の通貨へのシフトを推進しているのを尻目に、最近では米経済の堅調さや高金利政策、地政学上のリスクの高まりを背景にドルの支配力が一段と強まっている。

主要7カ国(G7)がウクライナ侵攻を巡ってロシアに制裁を科したことで、BRICSは通貨同盟を形成する努力を加速させたが、「脱ドル化」は進展していないと報告書は指摘した。

また中国人民元の国際決済システム(CIPS)に直接参加する国・地域は、5月までの1年間で62増えて計142となった。間接的に参加する国・地域の数は1394。

中国は貿易相手国との通貨スワップを通じて人民元の流動性を積極的に支援しているが、世界の外貨準備に占める人民元の割合は2.3%と、2022年に付けたピークの2.8%から縮小している。

報告書はこの理由について、中国経済、ロシアとウクライナの戦争に対する中国の姿勢、中国が台湾に侵攻する恐れなどを懸念し、各国の外貨準備運用責任者が「人民元は地政学的にリスクの高い準備通貨」という認識を抱いているためと分析した。

またユーロは、対ロシア制裁によってドルと同様の地政学的リスクにさらされていることが明確になったため、外貨準備運用責任者はリスク低減手段としてユーロよりも金に目を向けるようになっているという。

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