【桟原将司連載#29】気付いたら3者連続三球三振を達成していました 次の日にスポーツ紙を見て仰天

立浪和義(右)と井端弘和(左)

【桟原将司 ハナの剛腕道中(29)】 2005年9月6日の中日戦(ナゴヤドーム)でした。先発はエースの井川慶さんです。当時の井川さんといえば、ほぼ完投みたいなピッチャーで僕は一応はブルペン待機していましたが、投げる予定はないやろなあくらいに思っていました。

展開としては4回までに井川さんが3点を奪われて劣勢。5回までは投げ切ったんですが、その時点でムネさん(嶋田宗彦バッテリーコーチ)が来て「次、サジ!」って言うんです。僕的にはえーっ!!てなって。

普段はこの展開ではハシさん(橋本健太郎)と思ってましたからね。僕の場合は、もっと先発が早い段階で崩れた時の要員。5回まできているので橋本さんやと思い込んでました。いわゆる、心の準備ができていないままマウンドに上がったわけです。

油断していたのがモロ出てしまいました。先頭打者は2番・井端弘和さんです。そこにいきなりホームラン。そして続く立浪和義さんにもホームランです。その後もバタバタして6回裏を抑えるのに7人の打者と対戦することになりました。

この時点でスコアはもう0―5です。2失点してロッカーに戻ってアンダーシャツを着替えていたら江草仁貴さんが来て「サジ、中西さんが呼んでる」と言われ、ブルペンの入り口でずうっとボロクソに怒られていました。

「どういう気合で投げとんじゃ! コラァ」って感じです。優勝争いしている中で最も大切な局面を迎えている。もちろん、それは分かってはいました。

ただ、説教を受けながら横目で試合のモニターを見ているわけです。1アウト、2アウトと見ながら試合は進んでいきます。次のイニングは誰が投げるのか。いや、交代って言われてないから僕がまだ放るんかい!となって7回のマウンドに上がりました。

次の回は先頭が投手の中田賢一さんでした。ここは難なく三球三振です。次が1番の荒木雅博さんで、外のボール球を振ってくれて三球三振です。で、前の打席でホームランを打たれている井端さん。2ナッシングから外角の要求だったのですが、ボールは真ん中に行ってしまいました。でも、ハーフスイングしてくれて、たまたま三球三振です。

僕の心の中では人生で初めて、2者連続本塁打を打たれているのでかなりへこんでました。試合も負けて名古屋の選手宿舎に帰ると江草さん、杉山直久さんが「サジ、飯食いに行こ~」って誘ってくれました。でも「いや今日は気分が乗らないから飯いらないです」って僕は断りまして…。ところが、江草さんも杉さんも優しいからホテルの前のモスバーガーでテイクアウトしてきてくれて「サジ、食べとかなきゃアカンでえ」って。

で、次の日ですよ。お昼にホテルの選手食堂に行ったところスポーツ紙を読んでみたら「桟原 3者連続三球三振」って見出しで記事が出てるじゃないですか。俺そんなことしたんや、ハハハハハってくらいに気付かなかったです。落ち込んでましたから。

登板へ臨む心の準備って大事ですよね。反省しました。中西さんには「怒られてできるなら、最初からそうしとけ」って言われましたけど…。普通に一生懸命やったけど、自分が思っていた登板の順番が普段と違うから油断してたんですけどね。

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